平成27(2015)年度 受賞者功績概要

総務大臣賞(1人)
1 小尾 敏夫/早稲田大学

30年に及ぶITU活動への参加に加え、2011年から4年間、事務総局長特別代表に就任し、ITUの産官学協力体制の確立を目指すアカデミア会員制度の試験的運用の際、加盟大学をゼロから88大学に増加させるなど、その責任者として制度拡充に多大な貢献をした。また、世界で初めてITU3局と早稲田大学の包括的協力覚書を締結、2003年にITU-早稲田研究センターを設立、以降6年にわたり初代所長として活躍、同センターを通じた途上国セミナーの開催など多彩なITU支援活動を主導した。他方、1980年代よりITU世界テレコムに参加、議長やスピーカーを8回にわたり務めるなど、同イベントの発展に尽くした。これらの貢献に加え、ITUの人材育成プロジェクトであるCoE(Center of Excellence)におけるアジア太平洋地区運営委員会議長を1998年から9年間務めるなど、途上国等加盟各国の人材育成に注力したほか、様々な国際会議に参加する中でわが国のプレゼンスを高めるなど多大な成果と貢献をもたらした。

功績賞(7人)
1 太田 宏/国際電気通信連合
ATM, MPLS, イーサネットベース網の運用機能高度化、高信頼化機能、通信品質、気候変動、スマートグリッド、耐災害ICT等の国際標準化に対し、ITU-Tのラポータ、IETFのWG議長、ITU事務局の立場から幅広く貢献した。
2 酒澤 茂之/株式会社KDDI研究所
2006年からITU-T SG9の標準化活動にラポータとして参画し、次世代の映像サービスに向けて我が国が世界をリードしている自由視点映像等の超臨場感メディアのケーブル伝送技術の標準化を主導し、J.600シリーズ及びJ.900シリーズの勧告化を導いた。
3 白木 和之/日本電信電話株式会社
1994年からITU-T SG15における光ファイバおよび光海底システムの標準化活動にラポータ等として参画し、国内対処方針の取りまとめを主導的に行い、光ファイバ海底ケーブルシステム関連勧告(G.973, G.977等)を含む多数の標準化に寄与した。
4 武智 秀/日本放送協会
ITUにおける「インタラクティブテレビ」および「放送通信連携システム」に関する研究活動を、ラポータおよびラポータグループ議長として主導し、2004年の「宣言型フォーマットのコモンコア」、2011年/2013年の「放送通信連携システムの要求条件」勧告策定に大きく貢献した。
5 古川 憲志/株式会社NTTドコモ
1996年から長年にわたりITU-R等において、携帯電話(IMT)、移動衛星に関する多くの標準化活動に貢献している。特に、WRCでの我が国への周波数割当て、IMT関連無線通信規則改定等に大きな貢献をしている。
6 松永 彰/KDDI株式会社
2012年7月のWP5D会合から、2020年及びそれ以降のIMTの動向への議論の枠組みについて、コレスポンデンスグループ等国内外の関係者との意見調整を行い、WP5D会合での提案が当該議論に大きく寄与した。
7 村上 誠/日本電信電話株式会社
ITU-T SG15において光伝送網技術関連勧告群の制改訂、Handbook作成とそのTutorial実施に貢献し、国際的紛糾を極めたMPLS-TP標準化では日本代表団団長として活動、APTにて他国を先導してWTSA共同提案を行う等して事態の収拾に貢献した。IECとSG15間の性能規定をめぐる紛糾ではLiaison Officerとして相互の和解に貢献した。災害時通信に関するITU-FGではEditorとして議論に参加、成果文書完成に貢献した。

国際協力賞(9人・団体)

1 アジア地域モバイルバックホール改良プロジェクト/日本電気株式会社
世界150か国に超小型マイクロ波通信システムを展開し、特にアジア各国にてブロードバンド環境の改善に寄与してきた。当該システムはソフトウェアのアップグレードのみで簡単かつ安価に、各国通信事業者によるネットワーク強化に貢献するとともに、関連技術は国際的な標準仕様(ETSI)にも採用された。本システムの市場展開は他に先駆けて実行され、こうした貢献に対し、インドネシアからの表彰、またTelecom Asia誌によるReader’s ChoiceAwardを受けるなど高い評価を得ている。
2 内山 洋祐/KDDI株式会社/公益財団法人KDDI財団
途上国のデジタルデバイド解消のため、多くの途上国政府などと交渉し、数々の共同プロジェクトを企画し、APTなどに提案し、その採択プロジェクトで、プロジェクトマネジャーやアカウントコーディネーターなどの主要担当を熟すのみでなく、現地の人と一緒に構築・実証など作業し、国際会議での情報共有など多方面で精力的に活動してきている。
3 桑原 正義/元日本放送協会
JICA専門家としてマレーシアやベトナムに赴任し、アジア太平洋放送開発機構や現地放送局で実施したOJTにより、ニュース取材や番組制作に関する新たな技術を移転し、アジア各国における放送の発展に貢献した。
4 古閑 次郎/元日本電信電話株式会社
1969年日本電信電話公社に入社し、JICA専門家として1980年9月から2年間ホンジュラス共和国、1984年11月から2年間エクアドル共和国、JTEC出向時はスワジランド王国に現地専門家として活動するなど計6年間、途上国での通信網計画の策定に関わる業務指導を行った。
5 小峠 忠義/特定非営利活動法人(認定NPO法人)BHNテレコム支援協議会
通算約30年間電気通信設備の建設にかかわる海外プロジェクトの開拓、コンサル、実施に従事し、東南アジア、東欧等の通信網の高度化に貢献するとともに、リタイヤ後は国際協力のNGOに参加し、バングラデシュの情報格差解消のためのプロジェクトの中心的役割を果たしている。
6 坂野 寿和/株式会社国際電気通信基礎技術研究所【日本電信電話株式会社】
総務省の委託研究開発に従事し、災害時に被災地へ搬入して通信を迅速に応急復旧させることが可能な移動式ICTユニットの技術を確立した。その成果をITU-Dプロジェクトによるフィリピンでの実証実験やITU-T標準化活動等へ積極的に展開した。
7 高原 厚/日本電信電話株式会社
総務省の委託研究開発に従事し、災害時に被災地へ搬入して通信を迅速に応急復旧させることが可能な移動式ICTユニットの技術を確立した。その成果をITU-Dプロジェクトによるフィリピンでの実証実験やITU-T標準化活動等へ積極的に展開した。
8 戸田 弘/一般社団法人 情報通信エンジニアリング協会
厚生労働省が主管しているアジア諸国への能力評価システムの移転事業の中の「情報配線施工」の分野で、海外からの研修生の受け入れ対応や海外(タイ、カンボジア)に出向いて技術指導員として活躍している。
9 無州 清/元日本電信電話株式会社
1960年日本電信電話公社に入社し、1985年2月からタイ電話公社における専門家としての5年間をはじめとして約7年間、途上国での通信網計画の策定に関わる業務指導を行った。
国際活動奨励賞 功績賞分野(12人)
1 浅香 航太/日本電信電話株式会社
将来のモバイル通信網のバックホール・フロントホールとして活用が期待できる次世代光アクセス技術について、ITU-T SG15で関連する勧告群のエディタ等として国内外の組織と協調を図り、日本の技術の国際標準化を推進。
2 一色 耕治/NTTアドバンステクノロジ株式会社
2005年6月よりITU-T SG2に継続参加し、主に電気通信番号管理に関する標準化活動に貢献している。特に、次世代ネットワークでの番号ポータビリティ実現方式に関する標準化においては、2014年5月会合で同意された改訂勧告補足文書E.164 Supplement 2のエディタとして中心的な役割を果たし、日本国内における採用予定方式を盛り込んだ国際標準の策定に尽力した。電気通信サービスに不可欠な番号管理・網管理の標準化を担うITU-T SG2において、今後の更なる活躍が期待される。
3 梅田 大將/株式会社NTTドコモ
3GPPにおけるLTE/LTE-Advanced方式に関する仕様策定において、グローバルハーモナイズを考慮した無線仕様策定を多数実現すると共に、AH議長、ラポータを務め仕様策定促進に多大な貢献を行っている。
4 衛藤 将史/国立研究開発法人 情報通信研究機構
ITU-T SG17におけるセキュリティ分野の国際標準化活動に参画し、多数の寄書を提出してきたほか、エディタとしてX.1037(IPv6の展開における技術ガイドライン)等の完成に主導的な役割を果たした。
5 門脇 真/NECマグナスコミュニケーションズ株式会社
国内外の関係者と連携し、光アクセスシステム技術分野の標準化を推進し、日本発のITU-T勧告化達成へ大きく貢献した。 この技術分野における日本のプレゼンス向上に大いに寄与しており、  今後も更なる活躍が期待されている。
6 神原 浩平/日本放送協会
WRC-15議題において、放送および放送に関連する無線業務に関する共用・両立性検討を主導し、ITU-RやAPG等の会合に出席して技術的観点から議論を主導し、これらの業務の適切な保護に大きく貢献した。
7 田中 清/日本電信電話株式会社
ITU-T SG16およびIPTV-GSIに日本代表団長等として参加し、国内外の議論を取りまとめIPTVやデジタルサイネージの標準化に貢献した。またSG16札幌会合の招致、準備および実施に尽力し、札幌会合の成功を導いた。
8 内藤 整/株式会社KDDI研究所
ITU-TおよびITU-Rにおいて、4Kおよび8Kに代表される超高精細映像の圧縮・品質評価方式について、横断的な標準化活動を推進した。特にJCT-VCでは、提案圧縮技術がH.265拡張プロファイルに採用され、4K/8Kテレビの実用化前倒しを促した。
9 永田 聡/株式会社NTTドコモ
3GPP標準化において、LTE/LTE-Advanced標準仕様開発に対し多くの技術提案をするとともに、RAN1 WG議長、副議長として、UMTS/LTE/LTE-Advanced無線アクセス技術仕様の策定に多大な貢献をしている。
10 仲 信彦/株式会社NTTドコモ
一貫して移動通信用音声・音響符号化の技術開発、標準化に貢献、LTE向け音声サービスの拡大を予見して新たな標準化の方向を提唱、移動通信で超広帯域音声と音楽を同時に扱える符号化への要求仕様、選定・評価方法、圧縮技術等、多岐にわたる寄与を行った。
11 長谷川 一知/富士通株式会社
ITU-T SG13において、TTC他で検討された日本の技術をベースとしたHEMS(Home Energy Management System)等ホームネットワークサービスの要求条件とアーキテクチャの勧告化(Y.2070)を主導し、また、エディタとしても貢献した。
12 福井 裕介/KDDI株式会社
ITU-R SG4において、固定衛星通信システムにおける地球局送信信号にキャリア識別信号を付加する技術の勧告化にあたり、中心的役割を果たした。本技術は、干渉が発生した場合に送信源の早期特定等に資するものである。
国際活動奨励賞 国際協力賞分野(7人・団体)
1 赤津 和彦/NTT東日本-南関東
電話線路設計・建設から保守運用まで精通しており海外での設備についての知識も豊富であるとともに企業内研修インストラクタの経験によりインストラクションスキルが高く、海外での技術指導・移転及び英語での講義による現地国の電気通信網における人材育成に多大に貢献している。
2 秋場 美奈子/特定非営利活動法人(認定NPO法人)BHNテレコム支援協議会
2010年のハイチ大地震では、被災コミュニティ放送局の修復と、被災者キャンプへの一斉同報システムの設置、またミャンマー少数民族帰還支援プロジェクトでは無電力地域に太陽光を設置し帰還民の生活環境整備を行うなど、BHNの重要プロジェクトの中心メンバーとして寄与しており、今後とも活躍が期待される。
3 川那 義則/日本放送協会
アルゼンチンにおいてアナログテレビとのサイマル放送実現のため、地上デジタル放送日本方式の利点であるSFNを構築するためのパラメータ策定を支援し、周波数を有効利用した効率的なネットワーク構築に寄与した。
4 田中 進/日本電気株式会社
アジア太平洋電気通信標準化機関(ASTAP)における防災・災害復旧システム専門委員会議長を務め、同地域における防災ICTソリューションの標準化に貢献、また東日本大震災の教訓に基づく強靭で先進的な防災ICTソリューションを提言し、台湾やフィリピンの防災システム基盤構築に貢献している。
5 デジタル ブロードキャスティング エキスパーツ グループ/一般社団法人電波産業会
我が国で開発された地上デジタル放送方式(ISDB-T)の国際普及に尽力し海外16か国で採用されるとともに、採用を決定した国々に対してそれぞれの国の標準の策定を支援するなど、各国における放送分野の発展に寄与している。
6 信常 伸一/公益財団法人 KDDI財団
海外ODA案件の円借款通信プロジェクトのコンサルタントメンバーとして、現地実施機関と既存の問題点・改善点を整理・調整し、新規導入設備の要求条件を迅速に調整するなど、海外通信プロジェクトに積極的、果敢に従事し、海外通信キャリアーの技術力向上、当該国の情報通信ネットワークの拡充・改善に貢献したことが大いに評価される。
7 藤田 浩/日本放送協会
地上デジタル放送日本方式(ISDB-T)を採用したベネズエラにおいて、首都カラカスにおける地デジ電波発射および、地方主要都市への番組配信ネットワーク構築の検討を指導し、地上デジタル放送の導入に大きく貢献した。