昭和53(1978)年度 受賞者功績概要

一般賞(4人)
1 阿部 英三/ 安立電気株式会社
昭和31年海上移動業務用SSB無線電話装置を完成し、世界に先駆けてわが国の海上業務にSSB方式を導入して通信の円滑化に寄与したが、そのご海上移動業務の世界無線通信主管庁会議及び国際無線通信諮問委員会(CCIR)に数次に渡って出席して活躍し、特にHF・MF帯へのSSB方式の導入に当たってわが国の実績に基づく技術基準の採用及び導入時期の決定に尽くし、また無線通信規則の改正に参画して短波帯の周波数再編成・VHF帯各チャンネルの使用区分の決定等に寄与するなど、わが国のITU活動に大きく貢献した。なお昭和42年以降電波技術審議会の専門委員として、わが国におけるCCIR活動を積極的に推進している。
2 佐治 信男/ 日本電信電話公社
昭和42年以降引き続いて海外協力活動に携わり、その間ITU及びわが国の海外技術援助計画に基づき約9ヶ年の長きに渡り、国情の異なるメキシコ・イラク・エルサルバドルに在勤して幾多の困難を克服し、あるいは電気通信訓練センターを開設して要員の育成に尽くし、あるいは電話網建設計画に参画して適切な管理・運営・技術上の指導に努めるなど当該各国の電気通信の発展に大きく貢献した。
3 平井 正一/ 宇宙開発事業団
昭和46年以降宇宙通信に関する世界無線通信主管庁会議及び国際無線通信諮問委員会(CCIR)研究委員会の諸会合に数次に渡って出席し、宇宙通信に関する周波数の分配・共用基準の作成等の審議、宇宙研究及び電波天文に関する審議に参画して宇宙通信技術の発展向上、わが国電波権益の確保に努めるなど、わが国のITU活動に大きく貢献した。なお、昭和45年以降電波技術審議会の専門委員としてわが国におけるCCIR活動を積極的に推進している。
4 山岡 元嗣/ ユネスコアジア文化センター
1971年及び1975年の二回に渡る国際電気通信連合(ITU)青少年作品コンクールの実施に当たり、文部省推薦の同コンクール日本実行委員会委員として、コンクールの計画・周知及び実施に関する事項の審議に積極的に参画し、その実行に当たる事務当局に対しても多くの適切なる助言・指導を与え、さらに各都道府県知事、同教育長、日本私立中学高等学校連合会理事長その他関係方面に協力を依頼する等ITU活動に対する新撃な協力を重ね、これらITU青少年作品コンクールの成功に大きく貢献した。
著作賞(3人)
1 井上 伸雄/ 日本電信電話公社 横須賀電気通信研究所
昭和49年以降、国際電信電話諮問委員会(CCITT)のCNC合同作業部会、特別D研究委員会及び第18研究委員会の諸会合に数次に渡って出席し、伝送方式とりわけ大容量ディジタル伝送方式に関するわが国の技術に基づく提案の理解周知に努め、伝送ふぃ術の国際標準化に関する国際世論の形成に寄与してきたが、特にCNC合同作業部会、第18研究委員会において長期間にわたりラポータとして活躍し、その間実に40件にのぼる寄与文書を自らまた関係者の意見をとり纏めることにより作成、提出して同委員会の活動に寄与し、わが国のITU活動に大きく貢献した。
2 太田 亨/ 国際電信電話株式会社  ジュネーブ海外事務所
国際通信網の設計や運用に際して時差の影響を受ける国際トラヒックの性質を考慮すべき必要に着目して早くから研究を進め、幾多の困難を克服して時差トラヒックの時間分布算定法を考案し、国際トラヒックの性質を明らかにすると共にこの特性を考慮した回線設計やルーティング方策についても検討を加えその有効性を実証した。この研究成果を基に、国際電信電話諮問委員会(CCITT)第13研究委員会に対し3件の寄与文書が提出されたが1976年の第6回総会において新勧告「国際トラヒックの標準プロフィル」が採択される等同委員会の活動に寄与し、わが国のITU活動に大きく貢献した。
3 新川 浩/ 富士通株式会社
昭和26年以降世界無線通信主管庁会議、国際無線通信諮問委員会等ITU諸会議のほか、国際電波科学連合、インテルサット、NASA等の諸会合に数多く出席し、戦後国際無線通信の発展に幅広い活躍を重ねたが、52年6月「ITU研究」誌No.64に掲載された「社会の発展と電気通信」は、開発途上国・先進国双方における電気通信のかかえる問題点を指摘し、今後の見通しに関連してかくあれかしと願う独自の意見を開陳したもので数々の事例・資料を駆使して展開される論旨は実に公正・明快で説得力に富み一般に裨益するところ大きく、この続編ともいうべき「進展する電気通信の環境とコモンキャリアの役割」(「国際電気通信連合と日本」誌第7巻No.10)とともに高く評価され、わが国のITU活動の推進に大きく貢献した。