昭和61(1986)年度 受賞者功績概要

特別賞(5人)
1 網島 毅/ (財)無線設備検査検定協会
昭和4年逓信省入省以来同27年退官まで、一貫して電波行政に携わり、戦後の混乱期に電波局長、電波監理長官、電波監理委員会委員長等の要職を歴任、電波三法制定の中核として、新しい電波秩序の確立および国際無線通信制度の確立に尽力した。また、終戦直後のメキシコ・シティにおける国際高周波放送会議、昭和26年のジュネーブにおける臨時無線通信主管庁かぎには技術顧問または首席代表として出席し、わが国の短波放送用周波数等の割り当て確保に努め、さらに、退官後は宇宙開発委員会委員として活躍するなど、わが国の電気通信および放送の発展に寄与した功績は極めて大きい。
2 古賀 逸策/ (財)日本ITU協会
戦前から国際電波科学連合(URSI)の重要メンバーとして、電波科学の研究に国際的な活躍をつづけ、昭和38年には推されて同連合の第9代会長に就任した。また、国内においても、東京大学、東京工業大学において教鞭をとる傍ら、電波技術審議会、電波監理審議会、国語審議会等の委員、会長、または副会長として、わが国の文化、科学の進行に多くの業績を残し、さらに、昭和46年創立された日本ITU協会の初代会長に就任、同57年9月逝去にいたるまで、わが国のITU活動の推進、展開に寄与するなどその功績は極めて大きい。
3 下田 武三/ 外務省
昭和6年外務省に入省し、条約局条約課長在任中、終戦直後におけるわが国の念願であった国際電気通信連合復帰のための、アトランティック・シティ条約加入事務を担当し、昭和24年戦後初めて開催されたパリ電信電話主管庁会議、ついで同26年にはヘーグ在外事務所長在任中、ジュネーブ臨時無線通信主管庁会議に出席するなど、戦後におけるわが国のITU活動の初期から電気通信に深く関わられ、わが国の国際的地位の向上に寄与した。また、外務次官を経てアメリカ大使在任中には、インテルサット恒久制度に関する政府間会議にわが国代表として参加し、地域衛星打上権の確保に努めるとともに、米欧間対立の解消に尽力し、行き詰まり状態にあった同会議を恒久協定成立に向けて大きく前進せしめた功績は極めて大きい。
4 長谷 慎一/ (財)無線従事者国家試験センター
昭和6年逓信省入省、電波監理長官、電波監理局長等の要職を歴任し、電波三法の制定にあたっては豊富な国際経験と卓越した識見により指導的役割を果たし、電波秩序の確立に尽力し今日の電波利用発展の基礎を築いた。また、昭和23年より2年2ヶ月にわたり、ジュネーブにおける臨時周波数委員会、第三地域無線通信主管庁会議準備委員会、同無線通信主管庁会議に出席して、わが国の中波放送および漁業無線用周波数の確保につとめ、退官後は国際周波数登録委員会委員として活躍するなど、わが国の電気通信および放送の発展に寄与した功績は極めて大きい。
5 林 一郎/ (社)電信電話工事協会 関東支部
昭和3年逓信省奉職、昭和12年より3年間同省より派遣された最初の在外員としてパリに駐在、この間、カイロ電信主管庁会議および無線通信主管庁会議をはじめ、多くの国際会議に出席し活躍した。戦後においては、逓信院電気通信復興局長、資材局長等の要職を歴任して荒廃した電気通信の復興に尽力し、退官後は工事業界等にあって、わが国の電気通信産業界の一翼を担う傍ら、福岡電子工業大学教授、北海道工業大学学長として後進の養成にあたり、また、エレクトロニクス協議会副会長に就任、電子技術の普及発展に尽力するなど、電気通信の発展に寄与した功績は極めて大きい。
褒賞(4人)
1 石渡 進/ 株式会社日本クラリビジネス
昭和46年9月当協会設立とともに設置された図書編集委員会幹事として、同54年2月まで7年半のながきに渡り、さらに同56年八月まで同委員会委員として、月刊誌「国際電気通信連合と日本」および「ITU研究」の編集に参画し、両誌の円滑な発行、内容の充実に貢献し、当協会の発展に寄与した。
2 川島 芳雄/ (財)NHKサービスセンター 視聴者センター
昭和51年9月より同57年6月まで6年のながきに渡り、当協会の研究集会委員会委員として、研究集会活動実施計画などの審議に参画し、公共放送事業における長年の知見経験により、常に積極的に意見を開陳し提言を行うなど、研究集会活動に寄与した。その間、また世界電気通信日行事等協会の行う諸行事にも積極的に協力した。
3 長沢 拓也/ 富士通興業株式会社
昭和46年9月当協会設立とともに設置された図書編集委員会の有力メンバーとして、同57年4月まで11年のながきにわたり、月刊誌「国際電気通信連合と日本」および「ITU研究」の編集に参画し、両誌の円滑な発行、内容の充実に貢献した。また、昭和54年開催のITU訓練基準専門家会合の模様を、「国際電気通信連合と日本」誌昭和55年4月号に発表、同56年2月号には、「電気通信網の保守に関するセミナー」(ITU主催、昭和55年10月、コロンボ)の講師としての参加報告を寄せた。
4 牧 武男/ 元 (社)電信電話工事協会
昭和54年4月より同61年3月まで7年のながきにわたり、当協会の運営委員会委員として、協会の運営方針、事業計画、事業報告、業務運営等の全般にわたってその審議に参加し、電信電話工事協会総務部長としての、長年の経験に基づき、適切なアドバイスを行い、事業運営の円滑化に貢献するなど、当協会の発展に寄与した。その間、また世界電気通信日行事、ITU青少年作品コンクール参加等協会の行う諸行事にも積極的に協力した。
一般賞(2人)
1 徳田 修造/ (財)無線設備検査検定協会
卓越した知識と豊富な経験によって、電波の有効利用、無線通信技術の発展向上に努めると共に、世界の電波界におけるわが国の地位の向上、電波権益の確保に大きく貢献し、また、昭和58年には移動業務に関する世界無線通信主管庁会議に、わが国の代表団の団長として出席し、海上における新たな遭難安全通信制度の実施に関連する無線通信規則の改正など、ITUの活動に寄与した。さらに、その優れた指導力によって、放送の全国的な受信機会の平等の実現、難視聴の解消、放送ニューメディアの発達普及等のための施策を推進し、わが国の放送の発展に貢献した功績は大きい。
2 山崎 泰弘/ 国際電信電話株式会社 研究所
ファクシミリ技術の分野に卓越した知識と識見を有し、国際電信電話諮問委員会(CCITT)の1981年~1984年の研究会期において、データ網用ファクシミリ端末G4機のラポータとして、同機の標準化活動を積極的に推進し、G4機の国際標準方式としてT5およびT6の勧告化に貢献し、ITUの活動に寄与した。また、ファクシミリ信号の二次元符号化方式の研究においても先導的役割を果たし、信号の走査線間の相関を利用して符号化する方式を発明し、ディジタル・ファクシミリの基本技術を提案するなど、わが国のITU活動に貢献した功績は大きい。
著作賞(2人)
1 細矢 良雄/ 日本電信電話株式会社 通信網第二研究所
国際無線通信諮問委員会(CCIR)の1974年から1986年に至る三研究会期にわたり、非電離層伝搬に関する研究委員会に積極的に参加し、電波伝搬特性の推定法に関し、23件に及ぶ貴重な寄書を提出し、わが国における電波伝搬特性研究の先導性を世界に示すと共に、わが国の提案を反映し、かつ、世界各国の伝搬特性をも考慮した伝搬特性推定法の勧告化に貢献した。特に、「帯域内振幅偏差の推定法」および「スペースダイバシティ改善効果の統一的推定法」に関する寄書は、推定法の統一化の基礎をなすものとして高く評価され、ITUの活動に寄与し、わが国のITU活動に大きく貢献した功績は大きい。
2 柳町 昭夫/ 日本放送協会 放送技術研究所
わが国における静止画および文字放送方式開発の専門家として活動するとともに、国際無線通信諮問委員会(CCIR)の活動に積極的に参加し、昭和50年代初期の中間会議、ついで、最終会議に、静止画放送システムについての寄書を提出し、この主の放送の実現性を明らかにし、また、文字放送方式については、同58年以降、中間会議、中間作業部会および最終会議に、わが国の方式の特長、技術基準に関する多数の寄書を提出し、わが国の提案した文字放送方式を反映した勧告案の作成に尽力するなど、ITUの活動に寄与し、わが国のITU活動に貢献した功績は大きい。