平成2(1990)年度 受賞者功績概要

特別賞(3人)
1 小林 宏治/ 日本電気株式会社
昭和4年、日本電気㈱に入社し、以降60余年の長きにわたり、ITU活動に深くかかわり、特に1982年ナイロビでのITU全権委員会議にて、設立が決定された電気通信の世界的発展のための独立委員会に、世界を代表する17名の委員の1人として参加し、多くの卓越した提言を行い、発展途上国への開発援助策を中心とした、報告書の作成に参画するなど同委員会の活動に貢献した。また、インテルコム’77およびITUの主催するテレコム・フォーラムにおいて基調講演を行い、電気通信の将来の方向を示唆する、通信とコンピュータの融合(C&C)を提唱するなど、電気通信の発展に寄与した。この間、永年のITU活動への貢献により、ITU本部およびメンバー国から厚い信任を得ているのみならず、国連大学協力会会長等歴任するなど、経済界の要人として、また国際人として、広く社会に貢献すると共に、後輩の指導育成に尽力した。
2 佐藤 正二/ (財)国際交流基金
昭和15年、外務省に入省し、同33年在ジュネーブ国際機関代表部在勤中、ITUの世界電信電話主管庁会議に政府代表として参加し、従来、ヨーロッパ諸国にのみ適用されていた電話規則の世界化に尽力すると共に、翌34年に開催された全権委員会議においては、わが国を代表する全権委員として出席し、会議を成功に導くなど、ITUの活動に寄与した。更に同48年、スペイン大使在任中、マラガ・トレモリノスで開催された全権委員会議には特命全権大使として参加、さきにわが国がITU体制の法的安定性の件地から提起した国際電気通信条約の憲章化を推進し、これを全権委員会議の決議として成立せしめた。その後、昭和57年のナイロビ全権委員会議を経て平成元年のニース全権委員会議において憲章化が実現したが、これらへの寄与を通じ、わが国の国際的地位の広報に貢献した。
3 八藤 東禧/ (財)日本ITU協会
昭和9年、逓信省に入省、わが国の電波行政および技術の発展、宇宙通信分野の政策立案とその遂行に中心的役割を果たし、戦前・戦後を通じて、電気通信の発展ならびに国際社会におけるわが国の地位向上に貢献した。特に同33年のITUの世界電信電話主管庁会議には、政府代表随員として参加し、電信規則および電話規則の制定に卓越した業績を残し、次いで、同35年、39年の2回にわたりCCITT総会に参加し、電気通信の標準化に尽力した。また、同34年に開催された全権委員会議には、わが国を代表する全権委員として参加、ITU活動における中核的な存在として、会議の成功に寄与した。さらに同46年以降、日本ITU協会の理事長、ついで会長を歴任し、ITUを始め各種国際機関、標準化基幹等とわが国との架け橋として電気通信の有効利用及び国際交流の分野に貢献した。
一般賞(5人)
1 加納 貞彦/ 日本電信電話株式会社  通信網総合研究所
CCITT第Ⅵ研究会期(1977~1980)より、交換方式及び信号方式を対象とする第ⅩⅠ研究委員会において、ディジタル電話網やISDNの基本となる共通線信号方式の標準化に携わり、可変長形信号等、第7信号方式の基本方式を提唱し、ISDNの実現に貢献した。第Ⅶ研究会期(1981~1984)では、ISDNの基本概念である「ユーザ網インターフェース標準」を提唱し、ISDN勧告の確立に尽力すると共に、第ⅩⅠ研究委員会の副議長として、ディジタル加入者線信号方式の研究を推進した。更に第Ⅷ研究会期(1985~1988)では、第6作業部会の議長として、ディジタル加入者線信号方式の標準化を推進し、勧告「ディジタル加入者線信号方式データリンクレイヤ」および「ディジタル加入者線信号方式レイヤ3」等を完成せしめ、ISDNの実用化に寄与した。また、各種国際活動を通じて、ISDN技術の普及に尽力、協会主催のITUセミナーやITUフォーラムにも、パネリストとして参画、ITU活動の国内普及に貢献した。
2 栗原 芳高/ (財)無線設備検査検定協会
昭和23年逓信省に入省し、以来電波関係の要職を歴任、電波技術をはじめとする無線通信技術の向上ならびに電波行政の運営に尽力し、わが国における電波利用の発展に貢献した。また、同41年のCCIR第ⅩⅠ回総会を始め、数次に渡るCCIR関係会合に、わが国の代表として出席し、宇宙通信分野の研究調査活動に寄与した。特に同46年に開催されたCCIR研究委員会特別会同会議においては、宇宙通信に関する周波数の分配および共用基準策定の為の技術的な集大成に尽力し、宇宙通信の発展に貢献した。更に同57年より7年間にわたり、ITUの常設機関である国際周波数登録委員会(IFRB)の委員として活躍、卓越した指導力を持って周波数の国際管理に尽力すると共に、移動通信、宇宙通信、放送等の世界の電気通信の方向づけを行う世界無線通信主管庁会議に多大の寄与と貢献をした。
3 河本 太郎/ 日本放送協会 放送技術研究所
昭和63年の世界無線通信主管庁会議において、宇宙通信の国際標準化に尽力、特に衛星放送関係小作業グループの議長として、12GHz帯衛星放送に必要な地上から衛星へのフィダーリンクのためのチャネルプランおよびその技術基準策定に寄与した。この間、各国の諸要求の調整を図り、わが国のみならずアジア太平洋地域の各国の要求をも満たすチャネルプランの策定を成功させた。更にIFRBの要請に応えて、「単一軌道位置の干渉解析の為のパーソナルコンピュータ用ソフトウェア」を開発し、主管庁間の要求調整に供することで、チャネルプランの策定に貢献した。また、同57年以来多年にわたりCCIRの会合に出席、放送衛星の設計、運用ならびに信号伝送方式の国際標準化推進に寄与し、わが国の衛星放送技術の進展に貢献した。
4 村上 仁己/ 国際電信電話株式会社 上福岡研究所
ディジタルテレビ信号の国政標準化について、CCIR勧告に沿った経済的でかつ高能率名符号化方式を世界で始めて開発し、その確立に寄与した。昭和60年にはテレビおよびサウンドプログラムに関するCCIR・CCITT合同委員会のCMTTの最終会合に出席し、前記方式を国際標準方式として勧告化することを提案、中間作業班の副議長として、また専門家グループの議長として指導的役割を果たし、十数回に渡る標準化会合への出席を通じて、平成元年のCMTT最終会合では提案内容が標準として採択される等、高品質かつ経済的な今後の国際番組の流通に道を開いた。また、この標準化作業の一環として、符号化画像主観評価法ならびにテスト画像についても具体的な提案を行い、国際標準として採択せしめるなど、標準化活動に貢献をした。
5 室谷 正芳/ 三菱電機株式会社  開発本部
昭和44年以来永年にわたり、CCIR活動に積極的に参加し、同57年以降は、無線中継方式に関するCCIR第9研究委員会の副議長として、同委員会の運営に携わると共に、CCIR活動の効率化・近代化に努力した。また、一貫して同委員会の無線周波数配置およびスペクトラム利用に関する、作業部会の議長として、その卓越した指導力を発揮して、関係各国の意見の調整に努め、多数の勧告の成立に尽力した。特にマイクロ波通信方式の全般にわたって、わが国の標準化委員会への積極的参画ならびに寄与文書作成により、CCIR第9研究委員会への寄与文書が諸外国を抜いてトップを占め、新勧告の採択を容易にするなど幅広いITU活動と、CCIRの活動に貢献し、CCIRより厚い信任を得ることで、わが国のCCIRにおける地位を高め、標準化活動の推進に貢献した。
著作賞(1人)
1 北見 憲一/ 日本電信電話株式会社 ネットワークシステム開発センタ
昭和52年よりディジタル加入者線信号方式および第7信号方式の標準化に一貫して携わり、合同エキスパート会合の副議長として、関係各国の調整を図るなどISDN等に向けた勧告の作成に幅広く活躍した。特に第7信号方式については、CCITT第Ⅵ研究会期(1977~1980)で、CCITT仕様記述言語(SDL)を用いたメッセージ転送部の基本モデルとしよう記述案を提出し、勧告化に寄与した。他にも第Ⅶ研究会期(1981~1984)において、ISDNユーザ・網インタフェースにおける基本呼制御手順の為のフォーマット原則の最終仕様やチャネル識別子フォーマットなどの寄与文書を提出し、勧告化に寄与した。第Ⅷ研究会期(1985~1988)では、ISDNユーザ・網インターフェースのレイヤ3基本仕様や応用向けプロトコルのための第7信号方式トランザクション機能の勧告化に貢献、またISDNと第7信号方式の統一的な発展の為のインターワーキング条件の勧告化に際し会合の副議長として貢献。勧告化を実現するなど、寄書、論文等によりISDNの国際標準化に尽力した。
WORC国際協力賞(6人・団体)
1 故 海老原 慎治/元日本通信協力株式会社 海外支援室 調査役
フィリピン主要都市通信計画を完成させた。タイ電気通信エンジニアリング社長として、東南アジア電気通信の発展に寄与
2 川上 淳之助/株式会社NTCインコム コンサルタント部 チーフエンジニア
永年にわたりインドネシア電気通信公社のもう拡充計画に貢献し、総裁表彰も受けた。
3 木村 勤/全日本テレビサービス株式会社 海外事業本部 副本部長
昭和43年以来、各国の放送網拡充計画、技術指導等を通して途上国発展に多大な貢献をした。各種国際会議参加
4 「Konnichiwa」編集部一同
JICA研修員のフォローアップを目的に115カ国、3500名に配布し、KDD及びわが国の国際協力活動の理解促進を果たした。
5 嶋村 正三郎/日本電信電話株式会社  国際部 嘱託
ペルー電気通信研究訓練所の運営軌道に乗せ、今日のプロジェクト技術協力に発展させた。
6 橋本 雅生/元UPU/UNDPアジア地域郵便専門家
昭和26年以来、国際郵便業務に携わる。フィリピン、イランで専門家として技術指導に活躍。