平成4(1992)年度 受賞者功績概要

一般賞(7人)
1 大瀧 泰郎/ 三菱商事株式会社
昭和34年郵政省へ入省、55年電波監理局周波数課長、57年同局無線通信部陸上課長、63年通信政策局次長、平成元年放送行政局長等の要職を歴任。一貫して、日本の電気通信行政に関与し、平成2年より現職。この間、移動通信分野でのディジタル通信に関する二国間の国際調整を多く手がけ、特にCS-2打ち上げに際しての旧ソ連との調整では重要な役割を演じ、以後のわが国の衛星計画の推進に多大の寄与をした。ITU活動については、51年から3年半にわたり、CCIRで参事官として専門事務局に勤め、56年CCIR研究委員会最終会合代表を始め、57年第15回CCIR総会代表、62年アジア・太平洋電気通信共同体(APT)総会主席代表、平成元年のニース全権委員会議では次席全権委員として活躍するなど、国内外の電波利用の発展に多大の貢献をした。
2 大原 光雄/ 日本放送協会/ 放送技術研究所
昭和38年NHKに入社、40年技術管理局計画部、42年から1年間米国留学、56年総合技術研究部・無線研究部・主任研究員、59年から6年間ITU(IFRB)職員、平成3年より現職。この間、一巻して放送事業における技術分野において調査研究に従事。特に技術管理局計画部では、現在のわが国の中波ラジオ放送のチャンネルプランの基礎となる外国電波の夜間混信状況調査・対策を実施した。また、放送技術研究所では短波の電波伝搬およびSSB技術の研究を行うなど、わが国の短波放送の実施に当たり多大の貢献をした。IFRBの6年間では、短波放送のプランニングにかかわるコンピュータプログラムの開発に従事、有力なツールを完成するなど、多大の国際貢献を行った。また、59年のWARC-HFBC(第二会期、ジュネーブ)、平成4年のWARC’92には郵政省参与として参加した。殊にHF帯の周波数国別使用計画に必要な技術基準、計画作成の原則および方法についての寄与は顕著である。
3 北川 泰弘/ 株式会社NTCインコム
昭和27年電気通信省へ入省、33年フランス留学、38年コロンボプラン専門家としてカンボジア派遣、48年日本電信電話公社ジュネーブ駐在事務所長、51年海外連絡室次長、54年日本通信協力株式会社(NTC)取締役、平成2年より現職。この間、一貫してわが国の電気通信・国際協力活動に従事した。特に、カンボジアでは、コロンボプラン専門家として、裸搬の交叉改修の他、現地の若手技術者の養成、クメール字/ローマ字両用プリンターの開発などを指導した。48年からの3年間は、NTTジュネーブ駐在事務所長として、NTTの窓口として各種会議等のITU活動に参加すると共に、日本政府代表部に協力した。さらに、マラガトレモリノス全権委員会議、世界電信電話主管庁会議、CCITT/CCIR総会等に現地協力した。また、53年の国際コンピュータ通信協議会(ICCC)の事務局次長を務めた。特に59年の第8回CCITT総会(マラガトレモリノス)では、ISDNおよびテレマティーク関連勧告の審議促進に貢献した。
4 瀬沼 義昌/ ITU
昭和39年国際電信電話株式会社へ入社、45年より現職。この間、主としてCCITT事務局員としてITUの運営に参加した。アフリカプラン委員会を振り出しに、59年まで合計15回のプラン委員会を主催し、同委員会の権威、機能の明確化を図り、基盤整備と発展に多大の貢献をした。特に、委員会での討議の取り纏めの効率を図るためのコンピュータの導入を推進し、58年からの実用化に尽力し、大きな功績を残した。さらに、50年からはCCITTSGⅤ、Ⅵをも担当し、ケーブル保護、接続、機械強度等の研究、勧告、ハンドブック作成に寄与すると共に、日本技術の採用に努めた。59年以降はさらにSG Ⅸ、ⅩⅦを併せ担当し、電話網と端局機器、電話網におけるデータ伝送等の分野における国際標準化の推進に貢献している。
5 橋本 了/ 日本電信電話株式会社 国際部
昭和40年日本電信電話公社に入社、47年科学技術庁へ出向、53年海外連絡室調査役、55年海外協力専門家(インドネシア派遣)、60年NTTロンドン駐在事務所次長、63年ITU職員、平成2年より現職。この間、55年から2年間JICA専門家として、インドネシア国の電気通信の発展に貢献した。60年から3年間はNTTロンドン事務所次長として、ジュネーブ事務所と協力して、ITUと日本との調整等ITU活動を支援した。63年からはITU職員として、ITUの開発途上国に対する技術協力プロジェクトの実施責任者として、プロジェクトの実施および他面に渡るCTD活動の原動力として貢献した。特に、66年の第46回ITU管理理事会では、日本政府代表として、第3委員会(技術協力)を担当し、ITUの機構改革のうち、技術協力にかかわる電気通信開発センタ(CTD)の電気通信開発局(BDT)への統合に関する審議に寄与した。
6 村野 和雄/ 株式会社富士通研究所
昭和47年株式会社富士通研究所へ入所、55年トランスミッション研究部第一研究室長、58年通信処理研究部第一研究室長、62年通信処理研究部長、平成2年より現職。この間、通信の中核を構成するISDNの実現に向けて、多面的な研究を行い、ITUが推進する高度情報通信社会の実現の為に多大の貢献をした。ITU活動については、CCITTSGⅩⅧにおいてISDN勧告の審議の初期段階から参加し、ISDNコンセプト普及の面でも広く啓蒙活動を行い、CCITT勧告I.430草案の起草メンバーとしてメーカーの立場から装置の実現性に関する詳細検討結果を委員会に提出するなど、勧告制定に多大の貢献をした。59年以降も引き続きB-ISDNの勧告化に努めている。特にISDNシンポジウム’89では数多くの関係論文を発表し、現在の通信網から広帯域ISDNへの進化に着いて、メーカーの立場からの戦略を述べ、コンセプト実現の可能性を示した。また、「テレコム’87」では狭帯域ISDNシステムを「テレコム’91」では広帯域ISDNシステムを展示するなど、ITU活動に多大の貢献をした。
7 若井 登/ 東海大学 開発技術研究所
昭和25年電波庁電波部へ入所、42年郵政省電波研究所平磯支所長、50年調査部長、51年電波部長、55年企画部長、57年電波研究所長、61年より現職。この間、主として電離層伝搬の研究に従事、32年から3年間、南極地域観測隊員、また、40年には米国務省国立標準局・中央電波伝搬研究所の客員研究員として、①極域下部電離圏構造の研究、②中緯度夜間E域構造の研究、③下部電離圏における長波伝搬の研究など電波伝搬の研究に携わった。ITU活動に着いては、CCIR関連の国内審議に参加すると共に、47年からはCCIR関連の国内審議に参加すると共に、47年からはCCIR SG6にかかわる数多くの国際会議に参加、平成元年のCCIR最終会議でSG6のSUB-WGの議長として会議運営に貢献した。現在は電離媒質内電波伝搬の測定および雑音についての審議を行うWP6Cの議長をも務めるなど、ITU活動に対する多大の貢献をしている。
著作賞(2人)
1 河井 正彦/ 沖電気工業株式会社  通信ネットワーク事業本部
昭和38年沖電気工業株式会社に入社、51年電子通信事業部・総合技術部・伝送技術第1部搬送第1グループ長、58年伝送技術第2部長、60年電子通信事業本部・伝送無線事業部・伝送技術第1部長、平成元年伝送端局統括部長、平成2年より現職。この間、ITU活動として、61年から62年にかけてCCITT SGⅩⅧのAD-Hocグループメンバーとして、32kbit/sADPCM音声符号化方式の標準化の審議に携わり、63年CCITT SGⅩⅧ本会合で同方式はG.726に記載され、国際通信の高品質化、経済化に大きく寄与した。また、太平洋横断ケーブル運用者会議(62年)、インテルサットIDRセミナー(63年)、PTC’89およびANTEL YCOMTELCAセミナー(平成元年)でそれぞれ32kbit/s音声符号化方式を用いたDCE、トランスコーダについてプレゼンテーションを行った。平成元年から、電気通信技術審議会CCITT委員会・第8委員会(SG ⅩⅡ、ⅩⅤ、ⅩⅦ)の調査研究員、TTC第5部門(符号化)委員会副部門委員長としてITU活動に多大の貢献をしている。
2 星 元雄/ 日本電信電話株式会社 通信網総合研究所
昭和43年日本電信電話公社に入社、54年武蔵野電気通信研究所交換方式研究室長補佐、59年研究専門調査役、60年横須賀電気通信研究所研究専門調査役、62年より現職。この間、ITU活動として、60年以来、CCITT GAS9作業部会の副議長として「開発途上国へのISDN(サービス総合ディジタル網)導入に関するケーススタディ」の検討に際し、日本側のデータを参考として提示しつつ、ハンドブック取り纏めの中心的役割を果たした。また「アナログ/ディジタル混在網からディジタル網への移行に関するケーススタディ」では、タイ国の市外網を実例として、需要予測データ、現在の網構成データ等に基づいて、10年後のディジタル網への移行方法の研究を行った。この成果はITUから出版され、開発途上国における通信網のディジタル化計画に大いに役立っている。また、52年以来、数多くのITU主催の開発途上国向けのセミナー等に講師として参加し、開発途上国における電気通信の普及・発展に多大の貢献をしている。
国際協力賞(8人)
1 安藤 元紀/NTTインターナショナル株式会社 顧問
カンボジアで内戦まで線路部門の技術指導と通信網整備をおこなった。タイKMITでタイ人教官育成及びインドネシアで線路保全運用の保全計画作成を行なった。
2 石田 守/株式会社NTCインコム チーフエンジニア
アジア、中南米諸国のマイクロ回線伝搬調査、置局選定、衛星地球局保守、運用指導等に従事。昭和49年から延べ10年間ガーナで衛星地球局建設系悪、通信網建設計画等にコンサルタントとして参画。ガーナ第3次革命でカナダコントラクターが業務放棄して帰国後業務を引継ぎ成功させたことでガーナ関係者の信頼は厚い。
3 岡 馨/ピーシエムセントラル株式会社 取締役
アジア、中近東、中南米10数カ国の放送局設備、テレビ・ラジオ放送網建設及び現地技術者養成指導に貢献。途上国の状況を踏まえ誠実な対応は相手国関係者から信頼と尊敬を集めた。
4 乙部 和夫/元日本通信建設株式会社 社長室調査役
28年にわたり海外電気通信設備建設業務に携わり、タイ、インドンネシア、イラン等では工事会社社長、駐在員事務所長、プロマネとして通信施設工事の設計、施工管理等にあたり当該国の電気通信の開発に貢献した。
5 木村 栄一/元三和大栄電氣工業株式会社 技術担当部長
25年にわたり、マイクロ無線専門家として中南米、アジア、アフリカの10ヶ国で通信施設建設事業に従事するととも現地技術者も指導育成し工事を完成させ当該国の通信事業の発展と技術レベルの向上に貢献した。
6 高岡 博之/(財)海外通信・放送コンサルティング協力 専門部長
ケニア、サウジアラビア、エクアドルでトラフィック管理技術、電気通信網拡張計画の策定等を指導。ホンジュラス電気通信網拡張計画のプロマネを2年半務め計画を完成させた。
7 野間 広/元国際郵便運送協議会 常任理事
昭和23年以来我国国際郵便業務、国際協力分野において尽力。49年から10年間、UPUにおいて途上国に対する技術協力で活躍。
8 三宅 繁/元国際電信電話株式会社 海外協力部長
昭和46年以来一貫して国際協力活動に従事しパラグアイ及びインドネシアの衛星地球局の建設と中東及びインドネシアの海底ケーブルの敷設コンサルティング業務を主導しこれら計画を完成させ国際通信の発展に貢献した。