平成11(1999)年度 受賞者功績概要

特別賞(5人)
1 市原 博/ケイディディ株式会社
国際電信電話株式会社ジュネーブ事務所調査役、データ通信部長等として、ITUで進められていた電話・データ伝送技術、回線運用保守等の電気通信技術の国際標準化と国際勧告の制定に大きく貢献した。また、同社役員、社長として我が国電気通信業の伸長発展に貢献した功績は多大である。
2 緒方 研二/ 安藤電気株式会社
昭和31年第1回CCITT総会に日本代表団の一員として参加して以来、CCITTの初期において、プラン委員会活動を通じて「世界自動電話網」の完成に尽力したのをはじめ、世界の電気通信標準化に寄与した。昭和62年ITUの電気通信開発センター創立にともない、昭和63年に発足した(財)世界電気通信開発機構の理事長に就任、日本からの同センター活動の支援に精力的に取り組み、現在のITU-D(電気通信開発局)活動の基盤設立に貢献した。
3 柏木 輝彦
郵政省電気通信参事官および電気通信管理官として、郵政省のITU関係事務統括をはじめ、幅広く電気通信関係事務に携わり、電気通信技術の発展向上のために鋭意努力された。特に昭和36年以来、ITUの管理理事会日本代表理事、CCITT総会の日本代表団長を務めるなど、我が国のITUへの積極的関与に貢献した。また、長年にわたり日本ITU協会の出版、研究集会、セミナーなどの諸活動を積極的に推進し、我が国におけるITU活動の普及啓発に貢献した。
4 原 昌三/社団法人 日本アマチュア無線連盟
昭和34年(社)日本アマチュア無線連盟の発足時に理事に就任。昭和45年からは会長職を歴任し、国際アマチュア無線連合(IARU)およびIARU第3地域連合の代表として、ITU諸会議にオブザーバーとして数多く参加すると共に、世界無線通信主管庁会議等へ日本政府代表委員として参加した。これら活動を通じ、我が国の電気通信の発展に寄与すると共に、アマチュア無線の発展と国際友好親善を深めることに多大な貢献をした。
5 山本 草二/ 国際海洋法裁判所
昭和30年代後半以来、ITU条約の憲章化に関する省内研究会を主宰し、その後、ITU全権委員会議準備委員会委員、郵政審議会委員、INTELSAT仲裁裁判長団メンバー等を歴任した。その間、多くの著作を通じて、我が国における国際電気通信法制の学問的体系化をはじめて達成した。
褒賞(2人)
1 秋山 稔/ 芝浦工業大学
昭和30年以来、電子交換方式およびディジタル統合網に関する基礎研究を行い、現在の通信網の基盤をなしているISDNの開発に先駆的な役割を果たした。また、多年にわたりITU TELECOM FORUMの日本代表国際論文委員を務め、これら論文の審査にあたるため国内に設置されたテレコムフォーラム技術シンポジウム委員会の特別顧問としても、我が国のITU諸活動に大きく貢献した。
2 飯田 徳雄/ 社団法人 電信電話技術委員会
民間の標準化団体に会ってITUの標準化活動に積極的に参加し、電気通信に関する標準化について、マーケットの声や産業会からの標準化活動効率化の要望をITUの標準化活動に反映すべく貢献した。特に米国のT1委員会、欧州のETSIと協力、協調の組織である世界電気通信標準化活動強調機構(GSC)の活動を通して、マーケットの声を反映するための活動を行うなど、ITU電気通信標準化アドバイザリーグループの設立に大きく貢献した。また、平成3年から、新日本ITU協会のITU-T研究会主査として、ITU-T活動の普及啓発に寄与している。
一般賞(8人)
1 石川 宏/ 日本電信電話株式会社
昭和51年よりCCITT会合に参加、以来長年にわたり国内外の電気通信標準化活動の発展に尽くしてきた。平成3年12月から(社)電信電話技術委員会(TTC)標準化会議副議長、平成5年12月から4年間同議長をTTCを務め、また、郵政省・電気通信技術審議会標準化委員会内の各分科会と表裏一体の関係にある特別専門委員会をTTCに導入した。さらにITU-Tとの連携の基に、国内・地域標準化団体が協調を図ろうというGSCの発足と発展に尽力し、さらに国際技術であるPHSの世界への普及を図るため、PHSMoUの活動を推進した。
2 近江 克郎/ 日本放送協会 技術局計画部
長年にわたる放送衛星システム、特に周波数帯に関する研究を基に、昭和52年以来ITUの諸会議に出席し、放送衛星用周波数の割当に貢献した。特に17GHz帯の放送衛星フィーダリンクの技術基準作成に際しての降雨時のフォーダリンク電力制御に関する提案は会議の重要事項としてプラン作成に大きく寄与した。さらにディジタルハイビジョン、統合ディジタル放送サービス、ディジタル衛星音声放送用の周波数帯の分配に寄与するとともに、平成10年にはミネアポリス全権委員会議に参加するなど、幅広いITU活動を行った。
3 上瀬 千春/株式会社フジテレビジョン 技術本部技術局技術開発室長
平成元年から同9年までの9年間にわたり、ITU-R SG11(テレビ放送)関連会合を中心に積極的にITU活動に参加し、スタジオ規格等HDTVに関する各種規格や我が国の地上ディジタルテレビ放送方式の勧告化に寄与した。また平成3年のWP11CではAdhocの議長を務め、ゴーストキャンセラー(GCR)の日本方式を国際標準とするために尽力し、その勧告化にあたり中心的な役割を果たすなど、放送関連の国際標準化活動に大きく貢献した。
4 佐藤 孝平/ NTT移動通信網株式会社  国際ビジネス部
衛星移動通信システムに関する幅広い研究開発の経験を生かし、ITU-R WP8D等における移動衛星業務(MSS)の標準化および勧告作成に多大な貢献を行った。また、WARCにおけるSバンド周波数のMSSへの拡大にも貢献した。これらの成果は、NSTAR衛星移動通信システムの実用化に反映されている。また、近年はTG8/1およびASTAPを中心にIMT-2000の国際標準化に向けた積極的な寄与を行っている。
5 津田 俊隆/株式会社富士通研究所 ネットワークシステム研究所
CCITT 1985~1988年(昭和60~63年)会期において、ISDNの規格を審議していたSGⅩⅧに参加し、現在の広帯域ISDNの基本伝送フレームであるSDHの規格審議に積極的に関与し、寄書の提出、および規格勧告草案作成グループの主要メンバーとして活動し、勧告成立に大きく貢献した。狭帯域ISDNについても、勧告の修正や追加に寄与し勧告の成熟化に貢献した。また、勧告についても解説書を共同執筆し、世の中の理解促進および勧告の普及に努めた。
6 新納 康彦/ ケイディディ海底ケーブルシステム株式会社
昭和52年からITUのCCITT SGⅩⅤ(伝送方式)、国際会議に出席し、伝送システムに関する国際標準化活動を積極的に行った。特に昭和61年には、KDD・AT&T共同でデジタルハイブリットハイアラーキを提案して国際勧告化し、これをTAT-8およびTPC-3海底ケーブルで実際に採用した。さらにその後、光ファイバ伝送方式の国際標準化に継続的に貢献している。
7 平川 秀治/株式会社東芝 モバイルデジタル衛星放送事業開発室
平成3年よりITU-R WP11B(スタジオシステム)、JTG10-11(EPGの共通コンテンツ形式)、JWP10-11S(衛星放送)、さらにITU-T SG9(ケーブルビジョン)等の諸会合に参加、寄与している。特に、平成9年に発足したTG11/5(インタラクティブ放送)の初回会合では副議長に選任され、以後6階の会合で副議長を勤めるとともに、ディジタル放送分野において積極的に寄与している。
8 山田 肇/ 日本電信電話株式会社/ 持株会社移行本部
ITU、ISO、IECが共催した世界標準会議(平成9年10月)の運営委員会に日本代表として参加し、会議の成功に多大の貢献をした。一年後のフォローアップ会合もリードし、デファクト化やフォーラム活動が活発化しつつある状況での公的標準化活動のあり方を明らかにした。さらにITU-TのTSAGに対して標準化と知的財産権の問題で多数の寄書を提出し、ITU-Tの特許ポリシー改良に貢献した。また、この結果をとりまとめ、また考察を加えて論文化し、国内の知的財産管理者をも対象として、ITU-Tの活動を広く周知啓発した。
著作賞(1人)
1 須永 宏/ 日本電信電話株式会社/ ネットワークサービスシステム研究所
ITU-T SG7(データ通信とOSI)の活動に、昭和62年以降3会期12年(33回出席)にわたって参加し、OSI管理・TMN標準(SG4)の仕様決定にあたり多数の提案を行うと共に、現在ネットワーク管理機能の中でも重要な位置付けとなっている「カスタマネットワーク管理(CNM)」概念を提唱し、その方向付けを決定付ける重要な提案を多数発表してきた。これた活動において、議論を常にリードし、ネットワーク管理分野の世界標準に大きく寄与してきた。
国際活動奨励賞(6人)
1 佐原 功治/日本電信電話株式会社/情報流通プラットフォーム研究所
高度INに関する呼処理の技術に精通しており、その知識を生かし、遠隔のコンピュータシステム(サービス制御機能)から、ネットワークサービスの仕様に依存せずに、交換機(サービス交換機能)を制御する信号インタフェースの勧告化に寄与している。中でも、複雑な制御を要する多者接続を実現する高度接続制御方式に付いては、日本のオピニオンリーダとして勧告作成に貢献しており、SG11におけるQ.22(INアプリケーションプロトコル)のエディタも務めている。
2 津久井 聡一/ケイディディ株式会社/国際部
平成6年より、ITU-T SG3(料金と課金の原則)の諸会合に参加、ITUの場においてアジアの中の日本を意識して先進国と開発途上国との間に立ち、世界的にバランスのとれた国際通信の発展のためのルールつくりを目指し、先進国と開発途上国との経済的利害が衝突する国際電話の計算料金問題の解決に向けての取り組み、代替通話手段の適正な位置付け、米国一極集中により発達してきたインターネットにおける経済的なルール作り等に寄与した。
3 杉山 武志/NTT移動通信網株式会社/ネットワーク研究所
平成5年より、ITU-T SG11 WP4においてインテリジェントネットワーク(IN)の標準化活動に参加し、IN能力セット1改版・能力セット2・能力セット3の技術検討全般に寄与した。特にISDN関連能力の盛り込みを能力セット2以降で提案・勧告化し、該能力が国内外で利用されている点で寄与が大である。また、IN各能力セットにおいてエディタを担当し勧告作成に寄与している。
4 渡辺 馨/日本放送協会/放送技術研究所
音声放送にかかわるITU-R SG10の中で、音声デジタル符号化における主観評価法および客観評価法の確立において多くの寄与を行ってきた。特に、音声デジタル符号化品質の客観評価法の検討に関し、音声デジタル符号の主観評価を行うなど、積極的に寄与を行ってきた。また、平成10年からは映像および音声の品質評価にかかわるJWP10-11Qの副議長として活躍している。
5 田中 宏和/株式会社東芝情報・通信システム技術研究所
平成9年よりITU-T SG16(マルチメディアサービスとシステム)のラポータ会合に参加。モバイル環境のような雑音の多い環境でのマルチメディア通信の重要な技術である多重化方式(H.223 Annex D)をSG16に提案、寄与した。この間の2年間、次世代ネットワークであるWCDMA網の環境で、動画像や音声を伝送した場合の伝送品質を他の多重化方式と共に評価し、本方式の標準化に対し、積極的に貢献した。
6 清水 聡/株式会社日立製作所/エンタープライズサーバ事業部
平成9年2月のITU-T SG13全体会合にて、課題24(世界情報通信基盤(GII))のアソシエイトラポータに指名され、以来、ITU-T内外で広く行われているGIIに関する研究計画、管理について貢献した。特にアクセス網に関してはプロジェクトコーディネータとなり、本プロジェクトの主幹であるSG15との調整役となった。また、国内では、TTC GII特別専門委員会の副委員長となり、当委員会の検討結果より、GII勧告郡に対して寄与した。
国際協力賞(12人)
1 井口 義勝/元国際郵便基盤研究開発センター 専務
スイス・ベルンの万国郵便連合に5年間勤務し途上国の郵便業務の発展プロジェクトを多数実施し途上国郵便業務の発展に大きく貢献した。
2 石島 照造/元三和大榮電氣興業株式会社  海外施設部 技師
パラグアイの国際マイクロ回線網建設計画で新たな伝搬路測定方法を考案し成功させた。ネパール、バングラデシュ、コロンビア等でマイクロ回線網調査工事で現地技術者に理論・実習を講義・指導し現地技術者を育成した。
3 板橋 邦夫/元日本電信電話公社海外連絡室 調査役
メキシコ、コロンビア、パラグアイ等の中南米途上国の電気通信訓練センタープロジェクトへ派遣され、チームリーダーとしてプロジェクトを纏め、さらに、通信網計画の専門家として技術移転を実施し人材育成の大きくかかわった。
4 大野 正太郎/元国際電信電話株式会社  職員部 調査役
メキシコ電気通信学園で現地技術者を育成・指導し、さらに第2衛星通信地球局建設計画に参画し、国際通信疎通に貢献した。
5 工藤 哲郎/元日本電気システム株式会社  専任部長
イラン電気通信訓練センターで通信網整備計画で技術全般を指導。フィリピン電気通信訓練センターでデジタル交換機の全般の訓練を指導。シリアで電気通信網10万回線拡充プロジェクトで交換局建設工事全般のマネージメントを担当し完遂する等、途上国の電気通信網拡充に貢献した。
6 小林 建雄/元日本情報通信コンサルティング株式会社  海外事業部技術部 専門部長
10年の長きに亘りタイ国バンコック市内電話網拡充計画に参画し需要予測、施設設計、詳細設計、工事監理に携わり電気通網基盤整備に貢献。この他東アフリカ、ネパール、パキスタン、スリランカ、クウェート等の市内線路網プロジェクトにも従事しこれら途上国の電気通信発展に寄与した。
7 佐藤 秀雄/元株式会社NHKアイテック  海外事業部 主幹
アラブ首長国連邦でテレビ番組の質の向上と安定した放送実施で成果をあげた。ペルー及びコロンビアでカラーテレビ放送のセミナー講師を務め早期導入を促した。10件を越えるODA放送プロジェクト案件のコンサルタントを務める等、途上国ほ放送技術発展に貢献した。
8 澤田 郁/株式会社協和エクシオ 顧問
8年余りクウェート国郵電省の電気通信設備建設プロジェクトの総括責任者を務め同国電気通信の発展に大きく貢献した。タイ、マレーシア、ケニア等で通信線路網建設拡充プロジェクトに参画し、総括責任者として工事を完成させた。
9 清水 直/元日本電信電話株式会社/ 国際部 担当部長
中南米の途上国において5カ国の訓練センターで無線技術の教官を務め人材育成を行なった。また、昭和55年から3年間ドミニカのルーラル通信網拡充プロジェクトのプロジェクトリーダーとして同国のルーラル通信網の整備・拡充に貢献した。
10 中山 義秀/元日本情報通信コンサルティング株式会社  通信設計事業部大阪支店 専門課長
タイ、インドネシアで市内通信網の需要予測、基本設計、詳細設計及び工事監理に従事し同時に技術指導を行い現地技術者のレベルアップを行なった。フィリピンで市内光通信網の実施計画を手掛け成功させた。ベトナムで加入網光アクセスの標準作成を手掛け完成させた。
11 根本 則夫/元日本情報通信コンサルティング株式会社  海外事業部技術部 専門課長
インドネシア・ジャカルタ市内網の長期拡張計画お作成とミャンマー・ヤンゴン及びメイミョー市内網拡張計画に携わり両国の通信網整備に貢献した。
12 故 牧野 満男/元日本コムシス株式会社  海外本部営業部 副部長
ケニア郵電公社で加入者線路網の設計及び設計指導に携わり、同国の電気通信発展の貢献した。ザンビア国ルサカ市内通信網整備プロジェクトに携わり局外設備の整備・拡充に貢献した。
国際協力奨励賞(4人)
1 内海 三郎/日本放送協会 技術局付
フィジー及びキリバス国営放送のラジオ放送の番組制作から送信まで技術指導し厚い信頼と高い評価を受けた。今後もその活躍が期待できる。
2 桃沢 英明/日本放送協会 チーフエンジニア
ペルー電気通信訓練センターで広汎な放送技術を指導し現地関係者から多大な信頼を得た。国内でNHK派遣専門家の後方支援を行い、今後もその活躍が期待できる。
3 山口 恒守/KDD株式会社  グループ事業部 調査役
JICA集団研修の受入で衛星通信技術者として研究の講師を務め、受入業務に従事し積極的に研修を実施した。日本政府の衛星通信無償資金協力プロジェクトでコンサルタントとしてプロジェクト実施に大きく貢献した。今後もその活躍が期待できる。
4 吉田 峰雄/KDD株式会社  グループ事業部 調査役
インドネシアPT.T.INDOSAT社で中高速符号伝送データキャリアーTV会議システム導入のための技術指導を行い、サービス開始に貢献した。国内でJICA研修員受入業務で積極的に業務を推進しており、今後も活躍が期待できる。