平成17(2005)年度 受賞者功績概要

功績賞(7人)
1 江尻 正義/富士通株式会社/ネットワークソリューション事業本部
テレコミュニケーション管理に関して、ITU-T(1973年からCCITT SGⅣに参加)と同時に、産業界のコンソーシアム(TeleManagement Forum 理事、標準案主要執筆者等)および内外の学会活動(IEEE 技術委員会委員長、各種国際会議の議長等)において、この分野の先駆者として積極的に標準化をリードし、その普及を推進することで、競争市場での相互運用の容易な管理環境の構築に貢献した。また、TelecomおよびTelecom Asiaに論文発表、パネリストとして参画する等、ITU活動の活発化に貢献した。
2 遠藤 静夫/三菱電機株式会社/電子システム事業本部
長年にわたり、ITU-R SG4、SG9およびWRC関連の諸会合に参加し、関連業務間の周波数共用に関する勧告の策定などに貢献してきた。特に、我が国が実用を目指している準天頂衛星システムに関する周波数共用の課題について技術的寄与を継続して行い、課題解決へのイニシアチブを国内外の会合で発揮し、WRC-03での審議、ITU-Rでの勧告策定に貢献した。さらにKu帯利用の航空衛星業務導入に向けた技術基準策定に貢献した。また、長年にわたり情報通信審議会専門委員として、広い立場から我が国のITU分野における標準化にも貢献している。
3 大宮 知己/NTTアドバンステクノロジ株式会社/コアネットワーク事業本部
NTT在職中の1980年からCCITT(現ITU-T)SGXIの新設課題「ISDNのユーザ・網インタフェース」へ、日本提案寄書を多数提出し、1984年のレッドブックの仕様に貢献をした。1988年からはCCITTSGXIの新設課題「インテリジェントネットワーク」に多数の寄書を提出し、その標準の技術仕様に貢献するとともに、1991年に勧告化した能力セット1のエディタを担当し、勧告完成に貢献した。更に、1992年からはラポータとして、能力セット2を検討するグループの議長を務め、1995年に勧告化した能力セットの推進役としての任を果たした。
4 冲中 秀夫/KDDI株式会社/ 技術統轄本部 技術企画本部長
ITU-RにおけるFPLMTS(現IMT-2000)研究に参加し、TG8/1WG4議長として M.1078等のセキュリティ関連の勧告案を作成した。1998年からはCDMA2000系第3世代携帯電話の仕様を作成する国際団体、3GPP2の創設に中心的メンバとして活動し、3GPP2設立後は、サービス・システム要件をまとめるTSG-Sの議長を1999~2000年に、また最高意思決定機関であるSteering Committeeの議長を2003~2004年に務め、その発展と仕様化作業推進に多大の貢献をした。
5 小尾 敏夫/早稲田大学大学院/国際情報通信研究科 教授
国連UNDP勤務時代からITUとの関係を持ち、1991年以来ITUの主要国際行事に参画している。1998年にITUアジアCoE委員長に就任して以来、ITU-D分野での貢献が大きい。また、2001年に総合大学として世界で初めてMOUをITUと早稲田大学が締結した際の推進役となり、2003年には研究センター(ITU早稲田ICTセンター)の誘致を成功させ、所長を務めている。さらに、2001年より毎秋ITU早稲田政府高官ワークショップを委員長として開催し、世界の専門家育成に尽力している。
6 小林 哲/社団法人 電波産業会
1991年から4年間、CCIR専門事務局(現BR)に参事官として勤務し、FPLMTS(現IMT-2000)など移動通信に関するSG活動を支援した。帰国後は郵政省(現総務省)国際機関課長として、ITU理事、ITUレビュー委員会副議長、テレコム95日本パビリオン館長などを務め、数々のITUの会合に参加して国際協調に尽力した。また、内海事務総局長着任当初の基礎固めをした。現職では、電波システムの標準化の観点からITUへの日本の寄与に貢献している。
7 山本 浩治/株式会社NTTドコモ/IPコアネットワーク開発部
2001年10月1日に、世界初の本格サービスを開始したIMT-2000の基盤技術として適用されている移動通信用ATM(AAL2)の標準化に貢献し、IMT-2000の国際標準化に寄与した。その後もTTC移動通信部門委員長として3GPPにおいて他団体との調整、IMT-2000の高度化に尽力し、移動通信に関わる国際標準化の発展に大きく貢献した。
国際活動奨励賞(11人)
1 岩田 秀行/日本電信電話株式会社/第三部門 標準化推進室
ITU-T CTO会合、WTSA-04、TSAG会合等に参画し、ITU-Tの体制整備に向けて尽力した。また、APT標準化ワークショップやCJK標準化会合などにも参加し、標準化活動のアジア連携に尽力し、今後更なる活躍が期待される。国内では情報通信審議会情報通信技術分科会のITU-T部会の専門委員等、標準化に関わる重要な会合に多数参画しており、日本の標準化活動の推進にも貢献している。
2 岸 洋司/株式会社KDDI研究所
ITU-R WP9Bにおいて、ミリ波・準ミリ波帯無線アクセス方式の技術特性に関する新勧告の作成に主担当としてあたり、メッシュ型広帯域無線アクセス方式の稼働率改善効果とその技術要件を規定する新勧告の作成に貢献した。一方、ITU-R WP8Dでは、移動衛星業務におけるIPパケット伝送の新勧告作成を推進し、新しい研究課題として定着させるとともに、IPパケット伝送の性能目標導出方法を規定する新勧告案の作成に貢献した。
3 輿水 敬/株式会社NTTドコモ/研究開発企画部
3GPPおよびITU-Tにおいて、将来ネットワーク要求/機能条件、IMT-2000ネットワーク信号プロトコルの標準化を推進し、特にリリース99のアクセス信号プロトコルの標準仕様完成に大きく貢献した。また、IP技術をベースとした次世代ネットワークアーキテクチャ、要素技術、信号プロトコルの技術研究および標準化に貢献した。さらに、3GPP TSG-SAでは副議長を務めるなど日本の代表としても移動通信網の国際標準化に大きく寄与した。
4 後藤 良則/日本電信電話株式会社/アクセスサービスシステム研究所
ITU-T SG9の標準化活動を通じて、IPベースのFTTH上での多チャンネルデジタル映像伝送技術の勧告J.281作成に中心的な役割を担うとともに、IP上の映像伝送品質基準J.241の勧告化に際しては国内の意見集約や標準化議論をリードし、我が国の意見を標準化に反映させることに貢献した。今会期、Q.12/SG9「光アクセス網における多チャンネルアナログ及びデジタルTV信号伝送の課題」のラポータに指名され、今後の益々の活躍が期待される。
5 佐藤 和助/KDDI株式会社/au技術本部 ワイヤレスBB開発部 無線システム開発グループ
2000年から3GPP2 TSG-A (Access Network Interfaces)に参加し、2003-04年にはTSG-Aにて副議長を務め、2005-2006年会期も副議長に再選されている。TSG-Aにおいて、CDMA2000システムのAインタフェース(無線アクセス/コアネットワーク間インタフェース)の標準化を副議長として推進し、Aシリーズ仕様の策定と改定に貢献した。この期間に策定した3GPP2仕様は、ARIB/TTC標準として規格化されるとともに、ITU-R勧告M.1457として勧告化されている。
6 高橋 玲/日本電信電話株式会社/サービスインテグレーション基盤研究所
ITU-T SG12において通信サービスの品質確保に必須となる品質評価法の標準化に多大な貢献をした。現在までに、音声品質客観評価法に関するITU初の勧告であるP.861のエディタを務めるなど標準化に貢献すると共に、最近は積極的にIP電話、広帯域音声通信等の品質評価技術に関する寄書を提出し、勧告エディタ並びにマルチメディア通信の品質推定に関する課題ラポータを務めるなど、ITU活動に積極的に参画している。
7 中村 直義/日本放送協会/放送技術研究所(ネットワークシステム)
ITU-T SG9におけるケーブルテレビ伝送、およびITU-R SG6におけるデジタル放送に関して活動を行ってきた。特に、我が国のケーブルテレビにおけるデジタル放送の基盤となった伝送方式については、一貫して勧告化作業の中心となり、J.183として勧告化させた。また、IPベースの伝送方式を放送に適用するための要求条件等について国内の意見をとりまとめ、ITU-T SG9での審議に反映させた。今後とも引き続きITU活動に対する貢献が期待される。
8 本堂 惠利子/KDDI株式会社/ネットワークソリューション国際営業本部 海外事業開発部
国際料金計算及び計算原則を扱うITU-T SG3において、各国間の清算に関わる透明性・公平性を推進し、清算が円滑に行われるよう勧告づくりに貢献した。特に清算期間短縮化、国際インターネット接続原則を中心に研究活動を行ってきた。今会期においても日本からの提案による移動体着信料金に関わる研究の共同ラポータに指名され、重要度の高い当課題について今後も質の高いタイムリーな研究のアウトプットが期待されている。
9 三留 隆宏/新衛星ビジネス株式会社/周波数調整室
2000年よりITU-R SG6(放送業務)及びその関連会合(WP6S及びJRG6S-8F)等に参加し、2.6GHz帯の非静止衛星による放送衛星業務(音声)と地上系との共用条件の技術検討に関し多数の寄書を作成するとともにドラフティンググループ議長を務めるなど中心的役割を担ってきた。その成果は世界無線通信会議(WRC-03)での決議第539の改訂及び日本等における放送衛星業務(音声)への使用可能周波数の追加として反映された。
10 望月 健/アンリツ株式会社/コアテクノロジーR&Dセンター
2002年よりITU-T活動に参加し、デジタル通信網(SDH/SONET)におけるジッタ・ワンダ測定技術に関する勧告O.172の標準化に尽力してきた。この間に9件の寄書を提出し、特にSDH/SONETクロック伝送網の試験に必要なMTIE,TDEVワンダ試験信号の発生方法および検証方法について、シミュレーションに基づいた詳細な分析を行い、積極的な提案を行った。この結果、ワンダ測定に関する国際標準規格としての技術的完成度が高まった。
11 山田 秀昭/KDDI研究所
1999年よりITU-T SG15会合に参加し、通信のALL-IP化を踏まえ、高能率かつ高品質なVoIPパケット転送を実現する、多重化転送装置の標準化を諸外国に先駆けて提案した。以降、同装置勧告G.769および付帯Annex群を草案エディタとして取りまとめ、同勧告準拠の市場機器の製品化に寄与した。同時にIP音声ゲートウェイ、音声品質制御装置の勧告化にも貢献し、今後も移動/固定IP網における次世代メディアサービス提供技術の標準化への貢献が期待される。
国際協力賞(8人)
1 足立 堯彦/(財)海外通信・放送コンサルティング協力 (開発担当)専門部長
インドネシア地方電気通信網マスタープラン調査に従事し、この調査はその後ODA案件成立に決定的役割を果たした。また、ラオス国際電話網整備計画の基本設計に従事し、この設計がその後無償案件として実施されるなど、途上国の通信網整備に貢献した。
2 出石 昌三/元国際電信電話株式会社 グループ事業部 担当次長
KDDIにおける国際協力活動の中心的存在として、ミャンマー、モンゴル、ラオス、インドネシアなどでODAプロジェクトの技術協力ならびにコンサルティング業務を推進し、途上国の国際通信の発展に貢献した。また、日・露合弁通信会社をウラジオストックに設立し、ロシア極東地域との通信改善を図った。
3 遠藤 兌/株式会社NHKアイテック チーフエンジニア
放送技術分野で幅広い技術力と卓越した語学力を活かし開発途上国の放送の技術協力に長年従事した。特に、スリランカ放送協会ラジオスタジオ整備計画では、実施設計と施工管理に従事し、同国放送技術の基礎の構築と向上に貢献した。
4 小林 正次/元日本電信電話株式会社 担当部長
JICA専門家等として開発途上国に派遣され、電気通信・データ通信プロジェクトの調査、設計、施工工事の実施、コンサルティング活動、セミナーの開催、委員会活動、海外研修の講師等の業務などに従事し、電気通信・データ通信分野で開発途上国の発展に貢献した。
5 川畑 泰昭/株式会社アイエスインターナショナル 取締役(技術担当)
ヨルダン、ガーナ、ジンバブエなどで通信網拡張計画のプロジェクトマネージャーを務め、インドネシア、西サモアなどでプロジェクトにも従事するなど、途上国の情報通信プロジェクトのコンサルティング・サービスに長年従事し、途上国情報通信網の発展・拡充に貢献した。
6 谷井 良臣/元日本電信電話株式会社 担当部長
JICA専門家として、パラグアイの電気通信公社訓練センター通信技術者の育成、チリ運輸通信省電気通信総局で通信網の高度化と技術者育成、ホンジュラス電気通信公社で通信網の運用面の改善と技術者の育成などを行い、途上国の通信網の発展に貢献した。
7 布施 誠/富士通ネットワークソリューションズ株式会社 営業本部グローバル営業統括部 主席部長
30年以上にわたり国内外の電気通信コンサルタント業務に従事。ヨルダンでは第1次・第3次・第4次円借款による電気通信拡充事業に参加。第4次では総括を務め事業推進に貢献した。最近、JICA短期専門家でICT開発計画のためバングラデシュやカンボジアに派遣され活躍した。
8 松雪 方雄/元沖電気工業株式会社 課長
中東、アジア、中南米の20数カ国で通信インフラ工事責任者として途上国の通信網構築と近代化に従事した。海外勤務中、日本のODAや(財)光産業技術振興協会等のプロジェクトで当該国の通信環境の改善に尽くした。国内ではJICAルーラル通信研修の講師を長年務めた。
国際協力奨励賞(10人)
1 今川 眞治/東日本電信電話株式会社 技術部国際室 担当課長
フィリピンを始めアジアや中東の途上国で世界銀行及び日本政府の通信案件の調査・設計などの業務に従事し電話普及に貢献した。またベトナムBCCプロジェクトでは事業計画などの業務に従事し電話普及、新技術と新サービス導入などに寄与した。今後もその活躍が期待される。
2 古謝 保/NECテレネットワークス株式会社 主任
 1994年1月から3年2ヶ月、チリでJICA専門家としてカウンターパートにデジタル交換技術を移転。その結果、カウンターパートは必要な交換技術訓練コースを独自で開発できるレベルとなり、その後のチリの通信網発展に貢献した。今後もその活躍が期待できる。
3 末次 信佳/株式会社コミューチュア ネットワークソリューション事業部 システムエンジニアリンググループ グループリーダー
JICA専門家及び電気通信コンサルタントとしてインドネシア、ネパール、スリランカなどで、JICA無償資金、国際協力銀行、世界銀行等の資金による電気通信プロジェクトで計画立案、設計、施工管理、技術指導を行い電気通信の発展に貢献した。今後もその活躍が期待できる。
4 杉江 晶子/KDDI株式会社 課長補佐
1997年以来APT やJICAの海外研修コースの企画・立案、研修員受け入れ業務に従事し途上国の技術者育成に貢献してきた。最近ではIP関係研修コース立ち上げを精力的に進めIP通信技術者育成にも寄与している。今後も国際協力活動での一層の活躍が期待できる。
5 田中 秀樹/富士通株式会社 特定通信営業統括部長
約30年間、開発途上国を中心に約100カ国を訪問し、ODAベースのプロジェクト開発と実施を担当した。ビジネスのみならず、研修員受け入れ、専門家派遣、開発調査等の技術協力を積極的に推進し、電気通信分野の国際協力に貢献した。今後もその活躍が期待できる。
6 福岡 昭一/株式会社NTTネオメイト九州 担当課長
平成6年から2年間パナマで、平成11年から約5年間ベトナムで、JICA専門家として電気通信訓練プロジェクトのカウンターパート教官にデジタル伝送技術を指導、訓練計画を策定するなど、それぞれの国の電気通信開発に貢献した。平成16年度以降は国内においてJICA等の国際研修を受け入れ、今後もその活躍が期待できる。
7 堀下 満海/日本放送協会 札幌放送局技術部 担当部長
JICA長期及び短期専門家、NHKの短期専門家としてインドネシア等途上国5カ国の放送分野の技術力向上に尽力した。特に、インドネシアでは卓越した技術指導により同国の技術者独自で番組制作が出来るようになった。今後の活躍が期待できる。
8 三浦 周三/日本無線㈱ システム機器事業部SEグループ 課長
タイのルーラル地域無線電話プロジェクトでシステム設計、周波数割当、プロジェクト管理を行い、全土5000村に無線電話が導入され、タイ電話公社から高い評価を受けた。APTやJICA研修等で10年間に500名の研修員に講義し高い評価を受けた。今後もその活躍が期待される。
9 ムハマド アトハル サディク/東海大学医学部 専門診療学系救急救命医学中島研究室 研究員
ブータンでITU-D遠隔医療プロジェクトに従事。僻地に遠隔医療機材を運搬・設置、現地スタッフを医学教育、専門的診断を行い100例以上の救命を行った。東海大でのITU遠隔医療エキスパートトレーニングで途上国医療関係者を教育した。遠隔医療分野で今後も活躍が期待できる。
10 山木 賢蔵/KDDI株式会社 課長
ケニアにおいてJICA第三国研修で衛星通信技術の講師を務めたほか、南太平洋諸国遠隔教育システム建設プロジェクトやベトナム海事遭難安全通信システム建設プロジェクト等のコンサルテイングも行い、開発途上国への技術移転に貢献している。今後もその活躍が期待される。