平成18(2006)年度 受賞者功績概要

特別功労賞(2人)
1 桑原 守二/株式会社桑原情報研究所
無線通信の専門家として、マイクロ波無線通信、自動車電話、衛星通信等の実用化を推進し、わが国の無線通信技術を世界最先端レベルに発展させるのに大きく貢献した。また、電気通信技術審議会等の場で無線通信の国内標準の作成に尽力するとともに、CCIR総会等での国際標準化推進にも多大の貢献をした。
2 若井 登/財団法人 電気通信振興会
電波伝播の専門家として、永年にわたり無線通信の研究と後進の育成に大きく貢献した。また、電気通信技術審議会および情報通信審議会の各種委員会において、電波伝播、スペクトラム管理、作業計画等の分野で永年尽力するとともに、ITU-R SG3のラポータグループ議長として無線通信の世界的発展の推進にも多大の貢献をした。
WSIS特別賞(2人)
1 久保 純子
ITUが主導し、国際連合が主催した世界情報社会サミット(WSIS)の日本国親善大使として、WSISに対する国民の意識向上に務めるとともに、国内外のワークショップ等においてモデレータを務め、わが国のWSISへの積極的取組みに対する世界の評価を高めることに多大の貢献をした。
2 道傳 愛子/日本放送協会/アナウンス室
ITUが主導し、国際連合が主催した世界情報社会サミット(WSIS)の日本国親善大使として、WSISに対する国民の意識向上に務めるとともに、国内外のワークショップ等においてモデレータを務め、わが国のWSISへの積極的取組みに対する世界の評価を高めることに多大の貢献をした。
功績賞(8人)
1 石田 良英/社団法人電波産業会/研究開発本部 移動通信グループ
ITU-R TG8/1において、IMT-2000サービス勧告化、無線インターフェースの検討等の 活動に大きく貢献した。ITU-R SG8 WP8Fにおいても、第3地域ラポータを務めるととも に、IMT-Advancedフレームワークの勧告化作業等、わが国の寄与文書作成、実際の会合での中心的な役割を果たした。現在も引き続き、IMTAdvancedの候補周波数帯の検討等において中心的な役割を果たしている。
2 大石 雅寿/国立天文台
1993年以来わが国の電波天文を代表してITU-R関連諸会合に主体的に参加し、2000年以降はITU-R WP7D議長として世界を代表して電波天文業務の適切な保護に向けた活動を先導している。特にWRC-2000においては71GHz以上の周波数再配分をまとめ上げ、RAシリーズ勧告のほぼ全てを改訂、また、電波天文ハンドブックの改訂などを主導した。さらに、アジア太平洋地域の電波天文学者の声を反映させる国際組織を立ち上げ、APGにおける電波天文業務の認知度を大幅に向上させた。
3 沖見 勝也/NTTコミュニケーションズ株式会社
多年に亘りCCITT SGXVIIIのラポータ、副議長を務め、ISDNやSDH等デジタル網の国際標準化において指導的役割を果たした。ISDNでは2B+Dのユーザ網インターフェースの基礎、SDHでは、日米欧で異なっていたハイアラーキについて、世界統一速度(155.52Mbps)を有する同期フレーム構造を提案し、WP議長として欧米各国を順次説得して3年がかりで標準化に成功した。この仕様は現在のブロードバンド網の基礎として世界で共有されている。
4 小山 敏/株式会社 日立製作所/トータルソリューション事業部 ITSソリューションセンター
ITU-R SG8 WP8Aにおいて、ETC(自動料金収受システム)に使われているDSRC(狭域通信)や60GHz帯及び76GHz帯のミリ波車載レーダのITU勧告策定に大きく貢献した。また、ASTAP(アジア・太平洋電気通信標準化機関)では無線合同専門家会議リーダー兼ITS(高度道路交通システム)専門家会議議長として、ITSをはじめとする無線通信について、アジア・太平洋地域各国の専門家との交流の促進や啓蒙活動を展開している。
5 田中 三郎/ITU 電気通信標準化局(TSB)/第3研究委員会(SG3)
ITU-T料金関連勧告の改正及び新規業務の料金原則に係る研究に尽力し、かつ1988年に採択された国際電気通信規則の作成に寄与した。1991年からITU-T SG3参事官に就任。料金原則、インターネット接続ルール、携帯電話着信料等、市場指向の強い課題について研究をサポートするとともに、途上国の関与を深める事によりマルチ合意、勧告制定に貢献、現在に至るまで、ITUの標準化業務に多大な功績を残している。
6 福田 英輔/富士通研究所/ワイヤレスシステム研究所
3GPP設立当初から3GPP会合に継続的に参加し、W-CDMA無線仕様を作成するRAN WG4副議長、およびTSG-RAN副議長として、無線規格策定に貢献するとともに、日本の国内設備規則等の3GPP仕様への反映に尽力した。さらに、ITU-R SG8 WP8FにおいてW-CDMA勧告改訂、端末のグローバルサーキュレーション、不要輻射規制、測定精度などの関連勧告の策定を通して、IMT-2000国際標準化に多大な貢献をした。
7 前田 惟裕/宇宙航空研究開発機構/周波数管理室
地球観測衛星及び災害監視衛星システムの専門家として1993年以降継続的にITU-Rにおける標準化活動及び世界無線通信会議における無線通信規則改正作業に携わり、Lバンド合成開口レーダ、マイクロ波放射計等の運用環境向上に多大な貢献があった。また、ITU-R会合等に対し60件を超える寄与文書を用意することにより、科学業務分野の多数のITU-R勧告成立に尽力した。
8 渡辺 裕/KDDI株式会社/技術渉外室 企画調査部
ITU-T SG2における国際電話ルーティングに係わる研究、特にトラヒックの疎通率改善につながる標準化活動に多大な貢献をした。さらに、情報通信セキュリティ分野の研究を行っているITU-T SG17の副議長、作業部会WP2/17の議長を務め、近年注目を浴びているインターネットの安全性確保のための作業推進に指導的な役割を果たしている。
国際活動奨励賞(7人)
1 磯部 義明/株式会社日立製作所/システム開発研究所 第七部
テレコミュニケーションシステムのセキュリティ技術の勧告化を進めているITU-T SG17へ、テレコミュニケーション環境において生体認証(バイオメトリクス)を実施する際のシステムメカニズムの勧告化を提案・採択され、課題8テレバイオメトリクスのアソシエートラポータ、および勧告案X.tsmのエディターとして、勧告化作業を担当している。
2 大堂 雅之/(独)情報通信研究機構/研究推進部門 標準化推進グループ
2000年-2003年のITU-R研究委員会において、28/31GHz帯高々度プラットフォーム局(HAPS)に関わる周波数共用/両立性の研究に従事し、計6本の新勧告作成に寄与した。その結果、2003年の世界無線通信会議(WRC-03)において、南北アメリカのすべての国やロシア等、多数の国が28/31GHz帯をHAPSシステムで利用可能な国として新たに加わることになり、HAPSに関する世界的な研究・開発活動の促進に間接的に寄与した。
3 武智 秀/日本放送協会/放送技術研究所 ネットワークシステム
データ放送における宣言型コンテンツフォーマットの共通コアに関する勧告案について、各国の方式をまとめて共通項を抜き出した寄書を2004年に提出し、日本のデジタル放送で用いられているBML を含むものとしてITU-R勧告BT.1699およびITU-T勧告J.201として勧告化を主導した。その後もコンテンツフォーマット、視聴者プライバシー保護、デジタル権利管理など多くの内容についてITUや電波産業会(ARIB)での審議に積極的に寄与している。
4 田村 基/株式会社NTTドコモ/ITコアネットワーク開発部
1994年からFPLMTS(IMT-2000)の推進に従事し、1995年以降は3G向けATM交換機の開発で「移動通信用ATM」AAL2の標準化に貢献した。2002年以降は3G以降のコアネットワーク「All IPネットワーク」の検討を開始し、その検討結果を3GPP、ITU-Tなどへ反映させた。2004年からITU-T SG19「移動通信ネットワーク」の副議長に選出され、Beyond IMT-2000アーキテクチャ勧告草案への寄与を継続している。
5 藤川 就一/NTTアドバンステクノロジ株式会社/アクセスNW事業本部メタリックアクセス技術センタ
メタリック電話線によるアクセス伝送装置(xDSL)関連の勧告作成を行っているITU-T SG15 Q4において主にADSL、VDSL関連の勧告作成に貢献。特に近年はVDSL2(G.993.2)AnnexC(日本地域用アネックス)に関する技術的詳細仕様を提案し、その勧告化に多大な貢献をした。現在はG.993.2の機能高度化仕様を精力的に提案しており、その改訂版作成に貢献している。
6 古川 憲志/株式会社 NTTドコモ/研究開発企画部・国際標準化担当
1996年よりITU-R会合に継続参加し、特にWP8DにおいてAMSS周波数割当関連事項、MSS共用検討等の中心的役割を担う等、通年7年以上にわたり大きな貢献をした。1999年以降はIMT関連標準化活動に従事し、WRC-2000でIMT-2000追加周波数割当議論や新研究課題提案に携わった他、WRC-07での新たな周波数割当てに向けた各種作業(候補周波数帯に関する議論、CPMレポート審議等)においても中心的な役割を果たしている。
7 宮地 悟史/株式会社KDDI研究所/マルチメディア通信グループ
ITU-T SG9において1998年に新設された研究課題「IP網上での映像・音声配信(Webcasting)」のラポータを当初より務め、以来3会期にわたり6件の勧告成立の中心的役割を果たすとともに、MPEGスプライシング、LSDI伝送方式等への技術提案が採用されるなど多くのITU勧告作成に貢献している。また、現在では通信・放送融合に向けた標準策定に精力的に取り組んでおり、今後の活躍が期待される。
国際協力賞(9人)
1 伊東 善元/元 KDDI株式会社  元 KEC研修部長
12年8ヶ月の長きに亘り地域国際機関APTやJICA等の海外研修コースの企画・立案、研修員の受け入れと指導・研修業務を行い、開発途上国の持続的な経済発展に欠かせないICT分野の人材育成に大きな功績を残し、その活躍と貢献は高く評価される。
2 金子 進/株式会社フューコム 営業グループ 担当課長
途上国通信網整備事業に35年に亘り従事し、最前線で陣頭指揮し、延べ17カ国の通信インフラ整備・現地技術者の育成にあたり途上国通信網整備に貢献した。特に、アンゴラの市内網工事において、優秀な品質と早期完成に導いた功績に対しアンゴラテレコムから感謝状を授与された。
3 榑松 八平/株式会社三技協 技術顧問
30年以上の長きに亘り、無線通信システムの開発と途上国プロジェクトに従事した。その間、無線専門家として、JICAルーラル通信計画研修の講師を長年務め、現在マレーシアマルチメディア大学で客員教授を務めるなど、途上国通信網整備の人材育成に貢献をした。
4 黒部 純一/日本情報通信コンサルティング株式会社 事業推進室長
 31年の長きに亘り通信分野の国際協力に従事し、15カ国22案件に携わり、途上国の電気通信開発に貢献した。特に、インドネシアではJICA技術協力の通信網整備長期計画で策定した15年長期計画が同国の通信整備事業に採用され、多くの整備プロジェクトが実施された。
5 下地 昇/元 日本放送協会 技術局施設業務部 チーフ・エンジニア
 NHK在職中に3年間、退職後3年間、インドネシアにJICA技術専門家として派遣され、同国の放送技術者の送信技術力向上と放送の発展に大きく貢献した。在職中の専門家派遣では、送信技術全般を指導しこの実績が現地側で高く評価され、退職後の再派遣につながった。
6 庄司 新一/日永インターナショナル株式会社 特別顧問
 ITU専門家としてサウジアラビア訓練センターで訓練内容、カリキュラム、教科書などを作成に従事、カウンターパートを育てるなど職員の訓練に貢献した。JICA専門家としてインドネシアPT.TELKOMで線路保守技術の向上に協力し、同国の電気通信技術の普及向上に貢献した。
7 長﨑 靖夫/株式会社東電通 技術嘱託
イラン等途上国7ヶ国合計13プロジェクトに携わり、そのうち5案件のコンサルティング業務ではプロジェクトマネージャーを務めそれらを成功に導いた。特にイランでのプロジェクトは日本のODAではなくイランの自己資金案件であり、その成功はイランとの友好関係を増進させた。
8 橋本 雅汎/元 日本電信電話株式会社 担当部長
 JICA専門家として、2年間マレーシア国立コンピュータセンターでデータ通信、データベースの技術指導、その後4年9ヶ月タイ国立コンピュータソフトウエア研修センターでデータ通信の技術指導等を行いそれぞれの国の電気通信分野発展に貢献した。これらの貢献に対しマレーシア国立コンピュータセンター及びタイ大学省から表彰状を授与された。
9 三橋 英夫/株式会社アイエスインターナショナル 取締役 開発担当
30年以上の長きに亘り、アジア、アフリカ、中近東の途上国でIBRD、JBIC等の金融機関やJICA等による多数のプロジェクトでプロジェクトマネージャーを務め、成功裏にプロジェクトを完成させ、途上国の電気通信網整備に大きく貢献した。現在も現役で活躍中である。
国際協力奨励賞(9人)
1 荒巻 修志/株式会社NTT西日本-九州 主査
20年の長きに亘り海外研修員受け入れ計画で途上国研修生の受け入れ業務に従事。光ファイバーケーブル技術や保守技術に関する研修を実施し途上国研修員の技術向上に貢献した。今後も研修分野でその活躍が期待される。
2 井上 由美江/西日本電信電話株式会社 社員
 ソロモンでの青年海外協力隊看護師隊員としての経験を活かし、JICA在外健康管理員としてバングラデシュで2年、タイで2年6ヶ月、情報通信・放送を始めとするJICA国際協力活動を医療面から幅広く支援した。今後も国際協力活動を側面から支援する活躍が期待される。
3 牛坂 正信/(財)海外通信・放送コンサルティング協力 第二技術部長
JICA長期専門家として2年間インドネシアPT.TELKOMにてTMN(電気通信網管理)を、その後更に1年間OSS(Operating Support System)の開発に関する技術指導を行った。これらを通じて電気通信技術普及に貢献するとともに両国の関係強化に努めた。今後もその活躍が期待される。
4 染谷 勝/KDDI株式会社 課長
 KDDIエンジニアリング・アンド・コンサルティングで8年6ヶ月スリランカ全国電気通信網整備計画調査(事前調査)やベトナム海事遭難安全通信システムの建設プロジェクト業務に従事し、途上国への技術移転を実施しその活躍・貢献は高く評価される。今後もその活躍が期待される。
5 田中 健二/(独)情報通信研究機構 主任研究員
大規模災害時の災害復興支援と被災者救援のため緊急救援システムの開発を手がけ、学術会議やITU、APEC-TEL、AIC、APT等で発表を行っている。昨年、世界30カ国の遠隔医療の研究開発や実態を取り纏めITUから出版される一翼を担った。その書籍がチュニスWSISやドーハWTDCで配布され各国代表団から高い関心を集めた。今後もその活躍が期待される。
6 田中 秀實/東日本電信電話株式会社 担当課長
タイ・バンコックのタイ電話会社(TT&T)で3年間、74県の地方都市に150万回線電話建設と運営業務に従事し同国地方都市の電話網普及とエンジニア育成に貢献したほか、インドネシアでプロジェクトの後方支援した。今後もその活躍が期待される。
7 福山 正文/NTTベトナム株式会社 取締役・プロジェクトマネージャー
ベトナム郵電公社とBCC(Business Cooperation Contact)プロジェクトを締結し、ハノイ市で基本電話24万回線の建設、通信設備・保守技術、通信サービス運営ノウハウなどを技術移転し、同市の電話普及率の大幅な向上に貢献した。今後もその活躍が期待される。
8 溝上 徹/日本放送協会 技術局送信技術センター 副部長
インドネシア国営ラジオ放送局(RRI)に2年間、JICAラジオ送信技術専門家として派遣され、多くのラジオ送信技術者育成、地方局での調査改善を行い、インドネシア全体のラジオ送信技術向上に寄与した。今後もその活躍が期待される。
9 矢住 廣孝/株式会社NTT西日本-九州 社員
APT、JICA等の海外研修員に自宅ホームパーティーや地域イベント等、日本人との交流の場、日本文化・習慣に触れる場を提供し、国際交流を通じて社会に貢献している。そのパーティ開催数は延べ96回、参加62カ国で722名に上る。今後もその活躍が期待される。
国際協力特別賞(2人)
1 小菅 敏夫/電気通信大学 名誉教授
大学で34年間の奉職中、情報通信技術の役割を重視し、教育の現場から、人材育成を中心とした技術移転の課題について、研究調査してきた。特に途上国への支援の重要性を強調し、研究調査を背景にした具体的課題の解決へ向けて、自ら国際協力に実践した。学生はもとより広く一般の方々の情報通信分野の国際協力の重要性の認識を高めた功績は非常に大きい。
2 長谷川 靖子/京都コンピュータ学院 学院長
コンピュータ教育支援を行う国際ボランティア「海外コンピュータ教育支援活動」を立ち上げ、使用済みとなったパソコンを途上国に寄贈し、更に学院の教職員・学生をそれら当該国に派遣し関係者にコンピュータ教育の研修を行っている。現在までアジア、アフリカなど16ヶ国に約3000台のパソコンが寄贈され、その研修の受講者達は自国のIT分野のリーダーとして活躍しており、同氏は途上国のIT分野の発展に大きく貢献している。