令和4(2022)年度 受賞者功績概要

(敬称略・所属は推薦時)

総務大臣賞(1件)  
1

 

佐藤 孝平 / 国立研究開発法人情報通信研究機構  
 1985年からITU及びAPTにおける無線通信分野の国際標準化活動に参画。主に、移動衛星業務や移動通信の国際標準化活動を精力的に行った。ITUでは、IMT‑Advanced、APTでは、IMT‑2000の国際標準化活動をはじめとする無線通信分野の国際標準化活動の活性化に向け多大な貢献をした。2014年にAWG議長に就任。AWG議長として、IMT用周波数の特定、電気自動車用ワイヤレス給電システム、ITS等、APT共同提案の策定等に資する多くの成果文書の策定を主導し、各国関係者から高い評価を得た。AWG議長を退任後も、AWG名誉議長に任命。AWG再編の議論では、加盟国間の意見調整等において中心的な役割を担うなど、引き続き俯瞰的立場から無線通信分野の国際標準化活動体制の強化に大きく寄与した。
国内ではBeyond 5G新経営戦略センター戦略検討タスクフォースにおいて、5Gの次の世代の移動体通信規格に関する次世代の標準化の議論に貢献していることは特筆に値する。
 
日本ITU協会賞 特別賞(1件)

1

浅川 智恵子 / IBMコーポレーション IBMフェロー/日本科学未来館 館長
カーネギーメロン大学 IBM特別功労教授
 全盲の研究者として情報通信技術のアクセシビリティ向上に取り組み、世界初の実用的なWebページ読み上げソフト「IBM Home Page Reader」を1997年に開発した。またWebページアクセシビリティ・チェック・ツールなどを開発しオープンソースとして公開するとともに、アクセシビリティに関する標準策定に貢献した。近年は「街」のアクセシビリティ向上に取り組み、視覚障がい者のための高精度屋内ナビゲーション技術Navcogを開発、実用化した。さらにAI技術、ロボット技術を応用したナビゲーションロボット「AIスーツケース」の開発を行うコンソーシアムを発足させ、障がい者の自立した移動や街歩きを支援する先進的なモビリティ・ソリューションの開発、普及に取り組んでいる。昨年より日本科学未来館館長に就任し、インクルーシブな社会を目指した科学コミュニケーション活動にも取り組んでいる。
このように長年に渡り、情報通信技術のアクセシビリティ向上のための研究開発にあたるだけでなく、自らその応用と普及にも取り組み、幅広い活動を行っていることは社会的にも意義深い。
 
日本ITU協会賞 功績賞(11件)  
1 大槻 信也  / 日本電信電話株式会社  
 ITU‑R WP5A/WP5C及びWRCへの継続的参加・寄与文書提案を通じて、固定無線/BWAの分野に関連するITU‑R勧告・報告の策定/改訂や、5GHz帯無線LANに関する無線通信規則の改訂に大きく貢献。さらにWP5C配下のWG5C‑4の議長を務め、会合運営・議論の活性化・内容の充実化に大きく貢献した。  
2 小畠 健治 / 一般社団法人日本ケーブルラボ  
 ITU‑Tにて、4K再放送対応ケーブルテレビSTB(セットトップボックス)の機能仕様などの国際勧告の策定に寄与し、日本のケーブルテレビ技術の国際標準化を主導。セキュリティ課題の副ラポータを6年間務め、デジタル著作権管理基盤の国内方針の形成を牽引した。  
3 川西 素春 / 沖コンサルティングソリューションズ株式会社  
 長年、ISDN、ATM、IP電話、IoT等の標準化活動に関与。近年ではスマートIoT推進フォーラム インフラモニタリングTFのリーダーを務め、インフラ維持管理へのIoT適用に関し、道路/建設等の利用業界と整合を図り、TTC技術レポートにとりまとめた。さらに、ITU‑T SG20でインフラモニタリングに関するIoT要求条件の勧告化を共同提案。副エディタとして活動し、新勧告が2022年2月制定、標準化活動を通じて産業発展に大きく貢献した。  
4 髙田 潤一 / 東京工業大学  
 異システム間の周波数共用技術の高度化に関する研究開発をはじめ、学会で高く評価される実績を有するとともに、総務省情報通信審議会における携帯電話等高度化委員会の主査を務めるなど貢献。更に国際貢献として1995年以来JICAの途上国への国際協力に携わり、複数国の大学の教育・研究の向上、人材育成を行うことを通じて、情報通信社会の発展に寄与してきた。  
5 田中 秀實 /   
 タイ、ベトナム、インドネシア等の東南アジアを中心に16年以上に渡り、基本電話回線の建設及び運用保守業務、情報通信基盤機能拡充移行計画調査等の実施やその後方支援及び、電気通信関連技術やリーダーシップ等の研修の企画・運営・講師を行うことを通じ、東南アジア諸国の電気通信の発展や電気通信業務を担う人材の育成に貢献した。  
6 栃尾 祐治 / 富士通株式会社  
 ITU‑T SG15に十数年参画し、WP3配下の複数研究課題にて、G.8031/Y.1731などEthernet、MPLSなど伝送技術に関わる十数件の勧告のエディタを担当し、研究課題間の調整を行いつつ、延べ約50件のコンセント・承認に貢献した。他、ISOC‑JPでの様々な委員活動を通してIETFに関わる国内啓発活動を実施した。  
7 中島 功 / 星槎大学  
 2000年以来、20年以上にわたってITU‑D関連の活動に従事。ITU‑D関連会合にラポータ・副ラポータとして出席し、ITUレポートやガイドラインの策定に尽力。これらの活動を通して、我が国のe‑Healthに係る施策の遂行や関連技術、サービスの普及・展開に多大な貢献を行ってきた。  
8 福山 正文 / NTTイーアジア株式会社  
 ヴァヌアツ共和国での通信網拡充プロジェクトや、東南アジア等諸国(インドネシア、インド、ベトナム)における全国規模の通信網拡充プロジェクトに、プロジェクトマネージャーとして参画。その他、各種研修及びセミナ講師を通じ、日本の通信技術のノウハウ技術移転を行い、各国の電気通信の発展に寄与した。  
9 堀田 明男 / 特定非営利活動法人BHNテレコム支援協議会  
 NTT海外プロジェクトにてスキル人材派遣、事業パートナーとの調整により事業展開を促進。マレーシアMSC計画において現地法人設立、通信主管庁・通信事業者との調整業務を担当。計画の早期実現を達成し、マレーシア国関係者より迅速な対応に高い評価を受けた。BHNではAPT人材研修をプロジェクトマネージャーとして統括、コロナ禍に際しオンライン研修を新規に立ち上げた。  
10 本堂 恵利子 / KDDI株式会社  
 ITU‑T SG3ラポータとして、通信政策及び各国間精算の国際標準化を長く推進し、他国際機関と連携したITU‑T勧告作成やITUの上位の会合成果に貢献。APTのWTSA‑20準備会合では規制/政策・標準化グループ副議長として関係決議改訂案の議事を取纏めた。WTSA‑20にてSG3副議長に就任した。  
11 横山 隆裕 / 一般社団法人電波産業会  
 長年にわたり、ITUの全権委員会議(PP)や世界無線通信会議(WRC)等の会合に日本代表として数多く参画し、我が国電波政策の会議成果への反映に大きく貢献。特にWRC‑07では首席代表代理として日本代表団を指揮。現職では、ITUでのITS標準化に貢献するとともに、APTWRC準備会合のDG議長を務める。  
日本ITU協会賞 奨励賞(18件)  
1 秋山 晋作 / 株式会社NTTドコモ  
 ネットワーク運用自動化の標準化を検討するETSI ZSMにおいて、技術仕様策定に貢献。AIを活用した故障予知や運用自動化を実現するクローズドループ仕様、ネットワークスライスを含むEnd‑to‑Endサービスのライフサイクルマネジメント仕様の策定を主導した。  
2 飯塚 浩人 / 日本電気株式会社  
 2018年よりITU‑T SG5においてソフトエラー対策に関する標準化に貢献。特に通信装置や半導体ベンダの設計者が必要とする技術情報をとりまとめ、エディタとしてソフトエラー設計対策に関わる勧告文書ITU‑T K.150の制定を主導。当領域における寄書提案を通じて関連勧告文書全5件の改訂にも貢献した。  
3 磯原 隆将 / 株式会社KDDI総合研究所  
 コネクテッド・カーが通信を行う際に取り交わされるデータのセキュリティを確保するための要件を定める勧告案について、先端研究の成果に基づく継続的な内容提案を行うとともに、中国と共同でエディタ職を務めている。また、国内において自動車業界団体への情報提供等に従事し、通信事業者との連携・協力に基づく国際標準化の推進に貢献。  
4 伊藤 史人 / 日本放送協会  
 FPU(Field Pick‑up Unit)などの放送事業用無線システム特性を記載した勧告F.1777/勧告M.1824において、4K・8Kのような超高精細番組の制作で使われている無線システムを追記する寄書を作成。日本代表団の一員またはサポートとしてITU‑R WP5A、WP5CおよびSG5へ参加することで、両勧告の改訂に寄与した。  
5 井上 芳洋 / エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社  
 ITU策定のIMT‑2000のベース標準である3GPP IMS規格において、事業者間インタフェース(NNI)の信号規格策定に貢献。国内における電話事業者間のIP接続化(IP相互接続)において国内標準化・国際標準化双方の議論に参画し、国際標準と整合性の高い国内標準規格の策定に多大な貢献をした。  
6 奧川 雄一郎 / 日本電信電話株式会社  
 2011年よりITU‑T SG5に参画し、通信装置のEMC(電磁両立性)に係る技術要件の勧告化に貢献。特に課題5のラポータとして高高度核爆発を伴う電磁パルス攻撃や、宇宙線由来の中性子線ソフトエラーに対する通信装置の耐力要件について実験や解析、IECとのリエゾンを経て体系的な勧告化に寄与し、今後も継続的な貢献が期待される。  
7 熊谷 慎也 / 株式会社NTTドコモ  
 3GPP標準化において、5G NRのアンライセンス周波数利用技術、産業向けIoTおよび高信頼低遅延通信技術、簡易化機能端末の技術検討・仕様策定において技術議論を主導。5Gの適用領域を拡大する技術仕様策定に貢献した。  
8 熊木 雄一 / 東日本電信電話株式会社  
 技術交流や研修等を通じてインドネシアPTテレコムと良好な関係性を構築し、光アクセス保守モデルの確立を目的とした運用・保守コンサルティングや、光アクセス開通工事工法・故障修理手法の全国展開研修を通じて、インドネシアの光アクセス技術者の育成やFTTHの発展に貢献。引き続き国際分野での活躍が期待できる。  
9 熊丸 和宏 / 日本放送協会  
 放送業務にて、日本のワイヤレスマイクの利用状況をまとめた寄与文書を策定し、勧告BT.1871‑2の改訂を推進。放送衛星業務にて、周波数共用基準を明確化する日本の検討結果を策定し、新レポートBO.2497の作成を推進し成立させた。これらITU‑R勧告改訂・新レポート作成を通じ、ITUの標準化活動に大きく貢献した。  
10 齋藤 進 / 日本放送協会  
 多年にわたり、放送業務、放送補助業務および放送衛星業務に関わるWRC議題等の他業務との周波数共用検討を技術的観点から主導。地上放送および放送素材伝送など多岐にわたる放送業務と衛星業務のITU‑R勧告・レポートの改訂作業を推進、ITUでの標準化活動に大きく貢献した。今後も引き続き、国際標準化機関や国際団体での活躍が期待される。  
11 下平 英和 / 株式会社NTTドコモ  
 移動通信分野において中心的な役割を果たしている標準化団体である3GPPにおいて、NRの技術提案を多数入力するなど、5G高度化の検討を推進。無線基地局のオープン化を目的とした団体であるO‑RANアライアンスにおいて、基地局装置間インタフェースの技術議論を牽引し、フロントホール分配装置と複数無線子局を用いた共有セル形成機能の仕様拡張に大きく貢献した。  
12 武田 洋樹 / KDDI株式会社  
 2013年から3GPP RAN標準化に参画し、LTEでは日本で使用可能な周波数を用いたキャリアアグリゲーション仕様の策定や、5Gでは2020年商用開始に向けたNSA(NonStandalone)方式の早期標準化完了提案や、基地局無線バックホールを実現する5G技術IAB(Integrated Access &Backhaul)では共同ラポータを務めるなど、日本で使用可能なモバイル技術仕様の策定に貢献した。  
13 谷田 尚子 / 株式会社NTTドコモ  
 ITU‑R標準化活動に従事し、WP5D会合では、他業務とIMTの干渉計算パラメータの寄与文書提案とそのプレゼン等を通してIMT周波数の国際標準化に寄与。ARIB在籍中はITU‑R WP5D日本代表団事務局として、国内議論・審議の促進や会合の円滑な運営により、日本のITU‑R WP5D活動活性化に貢献した。  
14 原田 崇 / 沖電気工業株式会社  
 IoTおよびスマートシティ・コミュニティの標準化を行うITU‑T SG20にて、国内外で深刻化が進む道路・橋梁などの土木構造物の老朽化を監視するインフラモニタリングシステムの実用化と普及促進の標準化を推進し、2022年2月のシステム要求条件に関する勧告成立に主エディタとして尽力。この領域での標準化活動の貢献が、今後も期待できる。  
15 二木 尚 / 日本電気株式会社  
 10年以上にわたり移動通信システム標準化団体3GPPのRAN WG2に参加。4G LTE及び5G NRの標準化提案および規格化に貢献。特に、走行試験の最小化機能(MDT)、セルラーIoT( NB‑IoT, eMTC)、5G採用のDual Connectivity(DC)の策定を主導、最新技術の規格化に貢献した。  
16 保谷 和宏 / 株式会社フジテレビジョン  
 超高精細映像の圧縮にHEVCコーデックを用いた番組制作や放送用映像符号化に関する勧告の審議を進め、番組交換用途を加える勧告改定に貢献。これにより放送事業者が4K/8Kコンテンツをファイルで交換する際の要求条件を国際的に示すことができ、超高精細映像の運用普及に尽力した。今後も国際標準化における活躍が期待される。  
17 前川 貴則 / 東日本電信電話株式会社  
 ベトナムのOCG社にて教育ICT支援システムプラットフォームとコンテンツ提供を実現し、同国の教育環境改善に貢献した。現在はNTT東日本国際室にて国際事業の推進に従事し、ベトナムでのソフトウェア開発拠点立上げ等を行っている。今後も開発途上国におけるICT関連事業の推進・拡大に向けた活躍が期待できる。  
18 吉田 愼司 / 公益財団法人KDDI財団  
 2017年度よりAPTがAPT加盟国・団体の職員を対象として実施するICT技術研修の計画・運営に従事。計8回(5年間)の研修を統括責任者等として運営に関わり、延べ24か国88名の日本に不慣れな研修員に対するビザ申請対応、空港送迎、宿泊先選定・予約などの滞在環境の整備の他、コロナ禍でのオンライン研修への円滑な移行に幅広く貢献した。  

 

以上