令和3(2021)年度 受賞者功績概要

(敬称略・所属は推薦時)

総務大臣賞(1件)  
1

 

前田 洋一 / 一般社団法人情報通信技術委員会  
 NTT入社以来、SDH、ATM、IP技術を含むブロードバンド通信のためのトランスポートネットワークシステムの研究開発に従事。1989年以降、トランスポートネットワーク及びシステム、光アクセスネットワーク及びシステム、ネットワークサービスインテグレーション、グローバル標準化戦略計画等標準化活動に従事。ITU及びAPTの標準化会議においてITU‑T SG13副議長をはじめ、SG15議長、「ITU‑Tの標準化体制に関する戦略的かつ組織的な検証と他の標準化機関との協調連携の枠組みの検討」を行うレビューコミッティの議長を務める等、長年に渡り要職を歴任し、国際的な標準化戦略の策定・推進を主導。また、APTではASTAP議長及びAPT WTSA準備会合議長を2期務めるなど、国際標準化活動におけるアジア太平洋地域の地位向上へ貢献。以上のように、ITU、APT双方から高く評価されていることは、特筆に値する。また、国内でもTTC代表理事専務理事を務め、総務省情報通信審議会の専門委員を務める等、我が国の内外標準化活動の発展に大きく貢献した。  
日本ITU協会賞 特別賞(1件)

1

「富岳」新型コロナウイルス対策プロジェクト 飛沫感染チーム(研究代表者:坪倉 誠) / 国立研究開発法人理化学研究所
 国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究センターは、文部科学省と連携し、スーパーコンピュータ「富岳」の計算資源を使い、医学的側面からの研究4課題、社会的側面からの研究を2課題を実施し、新型コロナウイルス対策に貢献。「飛沫シミュレーションによる感染リスク評価とリスク低減策の提案」は、神戸大学他5つの大学、鹿島建設やダイキン工業をコアメンバーとし、多数の企業が協力し、産官学の協同協働により推進。ウイルスの飛沫シミュレーションによる感染リスク評価、特にマスク装着効果を検証した結果については、世界保健機関(WHO)をはじめ、世界的にも高く評価され、感染防止のガイドラインの策定等に活用された。また、教室や電車内などでのリスク低減策は、社会活動の再開に向けた指針を与えた。これは、世界的にも高く評価される研究者の尽力によるものであり、Society5.0時代の開発が進められたことによる成果であることは特筆に値する。  
日本ITU協会賞 功績賞(9件)  
1 可児 淳一 /  日本電信電話株式会社 アクセスサービスシステム研究所  
 ITU‑T SG15において、課題アソシエートラポータとして光アクセスシステムの標準化を主導し、光アクセスネットワークの高速化・高機能化に貢献。また、技術フォーラムFSAN(Full Service Access Network Initiative)において、光アクセスシステムに関する技術ディスカッションを推進するとともに技術ロードマップの策定を主導し、ITU‑Tにおける勧告策定の加速に貢献した。  
2 北島 浩司 /  株式会社 KAIソリューション  
 青年海外協力隊OBとして青年海外協力隊のPR・啓蒙活動等に40年以上関わり、多数の青年海外協力隊員を開発途上国へ派遣。また、途上国の発展と共にグローバル人材育成にも貢献。さらに、日本が有する電気通信技術・ノウハウを活かし、諸外国に日本の知名度と信頼を高めると共にNTTの海外事業の発展と我が国の電気通信産業の海外進出に大きく貢献した。  
3 高木 悟 /  KDDI株式会社 技術統括本部 次世代運用推進本部 運用システム開発部  
 東日本大震災後の2012年開催ワークショップ“Disaster relief systems, network resiliency and recovery”から、通信システムの災害耐性を高めるための情報システムの分野において、ウェブ技術・オープンデータのマッシュアップによる業務利活用を地図・地理情報システムの分野に導入すること、及びその標準化に大きく貢献した。  
4 谷川 和法 /  日本電気株式会社 第一ネットワークソリューション事業部  
 ITU‑T SG16Q14ラポータとして国内デジタルサイネージ仕様のITU‑T SG13Q21ラポータとしてIMT‑2020でのネットワークスライシングやオーケストレーションを含むネットワークソフト化の各国際標準化に尽力。また、近年、量子鍵配送ネットワークの勧告化にも貢献するなど、その他日本の国内IPTV仕様のアップストリームとしてITU‑T勧告化を推進する等幅広い分野で功績をあげている。  
5 田村 基 /  株式会社NTTドコモ ネットワーク部グローバル事業推進担当  
 第2世代から第5世代にわたる移動通信網のネットワークアーキテクチャ標準化に一貫して携わり、ITU、3GPPその他の関連標準化機関において、各世代における移動通信網技術の国際標準仕様策定に貢献。移動通信ネットワークの実用化を推進した。また、途上国における技術支援に尽力し、移動通信の新技術導入に寄与した。  
6 蝶野 慶一 /  日本電気株式会社 放送・メディア事業部  
 2017年10月に米テレビ芸術科学アカデミーより技術・工学エミー賞を受賞したITU‑T H.265映像符号化技術の標準化及び実用化に、当該勧告の着手段階から大きく貢献。また、ITU‑T SG16において当該規格の勧告化まで主導的役割で貢献。さらに、当該規格を利用した製品開発で総務省のFPU(Field Pick‑up Unit)周波数帯移行事業や新4K/8K衛星放送事業にも貢献した。  
7 保谷 秀雄 /  特定非営利活動法人BHNテレコム支援協議会  
 20年近く、JICA及びJETROの専門家、BHNプロジェクトマネージャーとして、東南・南アジアの開発途上国において、情報通信技術の普及に貢献。特に情報処理技術者試験の普及振興や技術レベルの評価制度構築を通じたICT人材育成に寄与。また、ICT利活用による防災・医療分野における社会課題解決等に草の根から取り組み、情報通信分野での国際協力活動に尽力した。  
8 矢後 良一 /  元東日本電信電話株式会社  
 JICA専門家や世界銀行主導のプロジェクトコンサルタントとして、インドネシア電気通信拡充第6次5カ年計画の電話需要調査への技術協力や需要調査方法の技術移転を主導。またインドネシアPTテレコムとの共同事業パートナーであるMGTI社のNW技術・開発の取締役として電話設備の保守・運用業務を改善する等、約8年間インドネシアの電話普及拡大業務に従事し、国際協力活動に貢献した。  
9 山本 秀樹 /  沖電気工業株式会社 ソリューションシステム事業本部 ネットワークシステム事業部 システム第4部  
 IPTV標準化活動に初期から参加し、「IPTV視聴者の視聴情報に関する標準化」という分野を新たに開拓。現在、ITU‑T SG16副議長を務め、IPTV、デジタルサイネージ、アクセシビリティ、車載マルチメディア分野等の勧告化を推進すると共に、我が国の標準化活動にも貢献している。  
日本ITU協会賞 奨励賞(20件)  
1 青栁 健一郎 /  株式会社 NTTドコモ ネットワーク開発部  
 移動通信の標準技術仕様検討団体である3GPPにて、無線アクセス、及びコアネットワーク、双方の分野で技術仕様策定に貢献。無線アクセス分野では、携帯へ緊急地震速報を実現する技術仕様の策定を主導。また、コアネットワーク分野においては、サービス初期段階では限定的な5G利用エリアを、4Gで補完する技術仕様の策定に貢献するなど、今後移動通信に関する標準化活動において、ますますの活躍が期待される。  
2 大関 武雄 /  株式会社KDDI総合研究所 無線通信方式グループ  
 2013年よりRadio Access Networksについて審議する3GPP RAN WG1 (RAN1)において5G向けの無線信号波形に関する議論や、5GとLTEとを同一システム帯域内で同時に運用するための技術に関する議論に貢献。更に、RAN1にて5Gの低遅延化に関する議論に寄与する等、今後も無線通信システムの物理レイヤー高度化に関わる標準化への貢献が期待される。  
3 亀井 雅 /  日本放送協会 放送技術研究所 伝送システム研究部  
 日本提案による新4K/8K衛星放送の普及に資するWRC‑19議題に関して、ABU(アジア・太平洋地域の放送事業者等の連合組織)の共通見解のとりまとめを技術委員会の副議長として主導的に活動。APG19‑5において、日本提案及びABU共通見解を支援するため、新4K/8K衛星放送のデモンストレーションを実施。今後も研究開発成果の普及・広報活動においても貢献していくことが期待される。  
4 久保田 文人 / 一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター  
 ITU‑R SG1とCISPR(国際無線障害特別委員会)との円滑な関係を推進するリエゾン・ラポータ及び、ITU‑R SG1 Steering会合メンバーとして、ITU‑R SG1における不要電波に関する事項を中心に主導的に活動。特に電気自動車やモバイルデバイス用ワイヤレス電力伝送の利用周波数についてのガイダンスの勧告化に尽力しており今後の活躍に期待される。  
5 栗田 大輔 /  株式会社NTTドコモ ネットワークイノベーション研究所 アーキテクチャデザイン担当  
 3GPP標準化において、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)のアンテナ要求性能規定や、LTE/LTE‑AdvancedのMIMOアンテナ評価技術の策定、5G NR(New Radio)のバックホールリンク適用技術、アンライセンス周波数利用技術、通信エリア拡張技術、機能制約UE(User Equipment)の技術検討・仕様策定等において技術議論を主導。技術仕様策定にも貢献してきており、今後の活動が期待される。  
6 坂本 泰志 /  日本電信電話株式会社 アクセスサービスシステム研究所  
 ITU‑T SG15課題5・課題8における、光ファイバ及び海底光通信システムの高速化を推進し、日本技術の標準化展開のために30件以上の寄書投稿を行うとともにエディタ(3文書)として勧告の作成を主導。特に大容量伝送用光ファイバ(G.654.E)の勧告化と日本技術の勧告への反映に大きく寄与、今後の活躍が期待される。  
7 坂本 信樹 /  株式会社NTTドコモ 電波企画室  
 IMT用周波数に関する国際標準化活動に従事。ITU‑R WP5D会合における関係各国との調整、ARIB内における対処方針の取り纏め、CJK IMT‑WGにおける中国、韓国との連携強化等を通じて議論を促進。WRC‑19におけるIMT用周波数の追加特定や、その他周波数共用検討に関する研究に貢献する等しており、今後の活動に期待される。  
8 蔀 拓也 / 日本放送協会 放送技術研究所 伝送システム研究部  
 ITU‑R WP6Aに日本代表団の一員として継続的に参加し、日本の地上4K/8K伝送技術を関連するレポートに反映。第2世代地上デジタルテレビ放送のシステム選択ガイドラインの勧告改訂や、モンテカルロ法を用いた地上デジタルテレビ放送への干渉評価方法の新勧告策定について、技術的観点から主導。今後のITU標準化活動への更なる貢献が期待される。  
9 関根 徳男 /  NTT東日本─南関東 神奈川支店  
 メタル回線から光回線に移行途上にある海外通信キャリアに対し、日本の光回線技術との比較検討・課題抽出を図り、フィールドトライアルを実施。日本技術を海外キャリアに適合させることで、アクセス回線の品質向上と課題解決に貢献。今後も情報通信分野の国際協力において活躍が期待できる。  
10 手島 邦彦 /  株式会社NTTドコモ 無線アクセス開発部  
 移動通信分野の中心的な役割を果たしている標準化団体である3GPPにおいて、複数の無線技術案件で取り纏め役を務めるなど、4G及び5Gの標準仕様の策定に大きく貢献。また、無線基地局のオープン化を目的とした団体であるORANアライアンスにおいて、ワーキンググループの共同議長を務め、活動を牽引するさらなる活躍が期待される。  
11 東村 邦彦 /  株式会社 日立製作所 研究開発グループ デジタルテクノロジーイノベーションセンタ コネクティビティ研究部  
 2015年11月から国際標準化団体W3Cの標準化活動に参加し、IoTプラットフォームを相互接続可能とするアーキテクチャの勧告化に共同エディタとして貢献。特に、オープンソース実装による標準化内容の普及を主導。2020年7月から、IoT機器発見方式の共同エディタに就任し、今後も継続的な貢献が期待される。  
12 德島 泰 /  インスタリム株式会社  
 青年海外協力隊員として派遣されたフィリピンで2014年に開設を主導した市民向けデジタル工房「ファブラボ・ボホール」が市民の広い支持を得て、ファブラボはその後6年間に国内23カ所に設立されるまでに拡大した。これらのファブラボは、2020年には新型コロナウィルス感染拡大初期には個人防護具等の製作により初期の緊急要請に応え、さらにファブラボフィリピンネットワーク結成に至った。生産拠点の分散化に向けた環境作りにおいて、今後も重要な役割を果たし続けることが期待される。  
13 長尾 慈郎 /  日本電信電話株式会社 NTTサービスエボリューション研究所  
 ITU‑T SG16において、超高臨場ライブ体験(Immersive live experience)に関する標準化を推進。特に、エディタとして映像・位置情報等の同期伝送(H.430.4)、構築ガイドラインを含む表示環境(H.430.5)の勧告化を主導するなど、H.430シリーズ勧告の策定に貢献、今後も継続的な活動が期待される。  
14 藤田 一則 /  公益財団法人KDDI財団 国際協力部  
 APTプロジェクトを通じ、ミャンマーでのUSF(Universal Service Fund)制度の制定支援、モンゴルでのツーリズム/遠隔医療/教育の促進を目的とした低コスト工法による光ファイバ網の構築、タイでの救急車による搬送時の死亡率低減を目的とした救急医療データベースのプロトタイプ化等、ルーラル地域のデジタルデバイド解消に貢献。今後の活動が期待される。  
15 峯村 貴江 /  東日本電信電話株式会社 デジタル革新本部 国際室  
 JICAの技術協力プロジェクト(ブータン国「災害対策強化に向けた通信BCP策定PJ」)への参画や、諸外国政府・通信キャリア等を日本での研修に受け入れることにより、諸外国の通信品質の向上に寄与すると共に、多くの日本人メンバーを巻き込み国際協力の必要性や実施方法について育成を遂行。今後も情報通信分野の国際協力における活躍が期待できる。  
16 吉兼 昇 /  株式会社KDDI総合研究所 光トランスポートネットワークグループ  
 2006年よりITU‑T SG15の光伝達網(OTN)関連標準化活動に参画し、伝送速度10G/25G/40G/50G/100G/100G超インタフェース関連の多数の寄書を提出。特に、OTNの100G化と100G超化及びOTN上におけるイーサネット転送方式についてキャリアの要件を複数の勧告に盛り込んだ。動向の国内共有にも貢献しており、今後の活動に期待される。  
17 黄 靖逸・小松 裕・坂田 研太郎・福本 史郎 /  ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット 技術戦略統括 電波企画室 標準化推進部  
 2017年から災害時の使用や開発途上国でのデジタルデバイドの解消に期待されているHAPS(高高度プラットフォーム局)について、携帯電話基地局としての使用の実現に向け、課題となる周波数や共用条件に関し、ITUやAPTで精力的に提案。WRC‑23の議題として採択させることにつなげ、国際的な検討の促進に貢献している。  
18 株式会社クロア  
 「心の健康を維持することはSDGs実現のため重要な世界的課題である」として、人の心を癒す音楽の力に着目。長年医療と連携してAI、ビッグデータなどを活用したユニークなヒーリングのコンテンツ開発に取り組み、中国、インド、アフリカなどに積極的に展開。またNPOを通じ日本の子供に途上国支援活動に参加する機会も提供する等、今後の継続的な活動が期待される。  
19 次世代放送検討国対応タスクフォース /  一般社団法人電波産業会  
 地上デジタル放送日本方式(ISDB‑T)採用国における次世代地上デジタルテレビジョン放送に向けた検討に対応し、日本国内で開発中の次世代地上デジタル放送技術に基づく知見を共有。両国の技術的な連携の強化に貢献するとともに、相手国における放送分野の発展に寄与するなど、今後も継続的な活動が期待される。  
20 日本電池再生株式会社  
 資源を有効に使用する観点で鉛電池の再生化を図る事業として鉛蓄電池の長寿命化、廃棄鉛電池の再生化に着眼。日本のみならず、アジア・アフリカ市場での電気エネルギー資源再生に大きく貢献。ITU‑Dへの寄書提案や、ITU Telecom Worldへの参加を積極的に行い、資源を有効に使用する活動は高く評価でき、今後ますますの発展が期待できる。  

 

以上