平成26(2014)年度 受賞者功績概要

総務大臣賞(1人)
1 村野 和雄/元株式会社 富士通研究所
日本を代表する情報通信研究機関であり、欧米や中国に海外拠点 を持つ富士通研究所に勤務し、社長職、会長職を歴任した。1980 年代初頭より、ISDNについての研究を開始したSpecial D(次会期からのSG18 Working Party)のメンバーとして活動開始後、ICT分野の研究開発、実用化、ならびに国際標準化において指導的役割を果たし、日本のICT産業の発展に大 きく貢献した。特に、広帯域網、光アクセス網、第三世代移動通信網の分野で、グローバルな視点で戦略的な標準化を指揮し、通信産業の 発展に寄 与すると共に、ITU等での国際標準化活動に資する技術者の育成に多大な貢献をした。
特別賞(1人)
1 滝川 クリステル/株式会社 フォニックス
フジテレビの報道番組等において視聴者から愛されるキャスターとして活躍される一方、WWF(世界自然保護基金)ジャパンや世界の医療団親善大使としての活躍、フランス大使館から藝術文化勲章(シュヴァリエ)を叙勲されるなど幅広く国際貢献の一翼を担ってこられた。 また、我が国が標準化 を主導するスーパーハイビジョンをはじめ、新たな放送・通信サービスの拡大が大きく期待される中、我が国の最先端情報通信技術とその活用を世界に アピールする好機である2020年東京オリンピックの招致成功は、今後の情報通信・放送産業界にとって意義深いものである。 2013年、我が国の文化・伝統の素晴らしさを世界に印象付け、招致成功に導いた「”Cool Tokyo”アンバサダー」としての功績は、特筆に値するものである。
功績賞(10人・団体)
1 荒木 正治/ドコモ・テクノロジ株式会社/知的財産部
1987年からITU-R活動に携わり、5GHz帯無線LAN新規分配関連勧告、固定業務共用基準と方式パラメータ関連勧告の取り纏めになどに貢献。近年は、セクタアンテナ基準パタン勧告の改訂に大きく貢献している。
2 石川 禎典/株式会社日立製作所/通信ネットワーク事業部
ITU-R SG5 WP5D会合において、IMTの無線インターフェースの勧告作成等に多大に貢献するとともに、IMT-Advancedの無線インターフェースに関する勧告改訂に関するSWGでは議長を務めるなど中心的役割を果たした。
3 河合 宣行/KDDI株式会社/運用本部 山口衛星通信センター
ITU-R(SG4)の標準化活動において、衛星ネットワークにおけるTCP/IPプロトコル特性改善に係る勧告取りまとめをはじめとして、IP利用を含む新たな衛星通信の利用を促進する新課題の導入や勧告・報告の推進を主導した。また、我が国における災害時における衛星利用事例を勧告・報告に盛り込み、災害時の衛星利用に関するシステム設計や利用技術の国際的な共有に貢献した。また、受賞者は、2012年にITU-R SG4副議長に就任し、同SGの運営に寄与している。
4 輿水 敬/株式会社NTTドコモ/研究開発センター ネットワーク開発部
ITU-T SG11信号方式の標準化、3GPPアクセスIFやSAE/EPC標準の完成に大きく貢献。TTC_3GPP専門委員会委員長(現職)、3GPP_TSG_SA副議長職を歴任。3G以降の移動通信網の発展と実用化に著しく寄与。
5 ソフトバンクモバイル株式会社 電波伝搬標準化推進チーム
高速・広帯域移動通信システムの実用化に不可欠な「時空間電波伝搬推定法」を世界に先駆けて開発し、その成果を勧告ITU-R P.1816, その改訂版P.1816-1, -2として国際標準化した。特に、勧告P.1816-2により、IMT-Advancedにも対応可能な屋外セル対応の時空間電波伝搬推定法を完成させた。
6 冨田 茂/NTTアドバンステクノロジ株式会社/ネットワークシステム事業本部
1997年から16年間ITU-T活動に参加し、SG6 WPの議長、副議長、ラポータなどとして活躍し、主に光ファイバケーブル特性に関連する10件の新勧告と4件の修正勧告制定を担ったほか、WPの議長および副議長として、SG6の円滑な運営に寄与した。
7 本多 美雄/エリクソン・ジャパン株式会社/技術本部
ITU-R SG5 WP5D会合において、IMT-Advanced無線インターフェース技術の開発ステップの管理に関するSWG議長を務めるとともに、将来のIMTの技術動向検討に向けた枠組みについて日中韓の共同提案をとりまとめるなど、IMTに関する国際標準化活動に多大に貢献。
8 村川 一雄/東日本電信電話株式会社/ネットワーク事業本部 サービス運営部 技術協力センタ
1996年よりITU-T SG5のラポータ(EMC)を担当し、多数のEMC勧告やハンドブックの制改定に貢献し、EMC技術の国内外への普及や人材育成に大きく寄与した。2006年からCCSAの技術委員会に参画し、中国の通信標準化動向について調査研究し、日中間の人材交流、共同実験(環境・省エネ)や通信標準化連携に向けた環境作りと実施に大きく貢献した。
9 横谷 哲也/三菱電機株式会社/開発本部 開発業務部
長期に渡りITU-T SG15に参加し標準化推進を通じて、光アクセスシステムの実用化に貢献した。また、FG-SMART(Focus Group on Smart Grid)でスマートグリッドのための通信機能の課題を抽出し標準化立ち上げに寄与した。加えて、同会合の横浜開催を実現し、日本のICTを用いたエネルギー管理技術のプレゼンス向上に寄与した。
10 渡辺 馨/日本放送協会/放送技術研究所 テレビ方式研究部
「5.1chを超える先進的マルチチャンネル音響システム」の研究活動をラポータグループ共同議長として主導し、2012年の「先進的マルチチャンネル音響の要求条件」勧告策定、2014年の「先進的音響システム」勧告の成立に導いた。

国際協力賞(7人・団体)

1 伊藤 義雄/元日本電信電話公社
1964年日本電信電話公社に入社し、1977年6月から1980年6月、1983年5月から1986年5月にクウェート通信省アドバイザーをはじめとして約6年間、途上国での通信網計画の策定に関わる業務指導を行った。
2 梅澤 由起/公益財団法人KDDI財団/国際協力部
途上国ルーラル地域に適したネットワークを構築・検証するAPTプロジェクトに長きにわたり参画。ITU-D会議でも副ラポータとして情報提供を行ない、途上国のデジタルデバイド解消に大いに貢献した。
3 NTTベトナム株式会社
ベトナム郵電公社との事業協力契約に基づくハノイ市の24万回線の電話網設備の建設、設備保守及び通信サービスノウハウの技術移転について1997年から15年間にわたり実施し、ベトナムにおける通信環境整備と人材育成に多大なる貢献を行った。今後も同国の情報通信分野に寄与し、同国の社会全体の発展に大きく貢献することが期待される。
4 瀬上 功一/元日本放送協会
JICAの専門家としてパナマ共和国に赴任し、国営教育テレビの現地技術者にOJTを実施することで、スタジオや中継車の操作法など番組制作に関する技術を移転し、パナマ国民の教育水準の向上と社会生活の安定に貢献した。
5 中村 英毅/元日本電信電話公社
1963年日本電信電話公社に入社し、1973年よりメキシコ合衆国、チリ共和国での約5年間に及ぶ海外滞在経験を含め、JICAの専門家として途上国での通信網計画の策定及び技術指導に関わる業務に従事した。
6 野中 正晴/特定非営利活動法人(認定NPO法人)BHNテレコム支援協議会
NEC勤務時は主に中近東向け通信システムの導入に尽力し、同地域における通信システム・サービスの高度化に寄与。BHNテレコム支援協議会参加後はアフガニスタンやインドネシア、パキスタン等における各種支援事業の企画・実施に中心的役割を果たし、被災者への支援を通じて国際協力に貢献した。
7 ミャンマー通信網緊急改善プロジェクト/住友商事株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社、日本電気株式会社
通信基幹網の整備により、ミャンマーの経済活動や国民生活の基盤となる通信インフラを先進国並みに改善させ、住民生活の向上、経済のさらなる活性化を実現。昨年開催された東南アジア競技大会や、2014年にミャンマーにて実施されるASEAN会議等の国際イベントにも貢献した。
国際活動奨励賞 功績賞対象分野(17人)
1 石榑 康雄/日本電信電話株式会社/NTTセキュアプラットフォーム研究所
ITU-T FG-M2Mにおけるエディタ及び(一社)情報通信技術委員会におけるe-Health WPのリーダーとして、国内外でe-Healthに関する標準化の議論に貢献。また、ITU-T SG16におけるラポータと連携し、ITUの各種イベントでのデモシステムのプロモーションを国内外で行い、Continua設計ガイドラインのITU-T勧告化(2013年12月)に貢献。
2 大槻 信也/日本電信電話株式会社/アクセスサービスシステム研究所
2011年より、ITU-R SG5 WP5A/5C会合及びWRC12への参加を通じて固定無線システム/固定BWAの分野に関連するITU-R勧告改訂や新レポート策定等に大きく貢献した。WP5Cではドラフティンググループ議長およびコレスポンドグループ議長を務め、「固定無線システムの利用と将来動向」のレポートの策定に貢献した。
3 大原 拓也/日本電信電話株式会社/NTT未来ねっと研究所
2006年2月よりITU-T SG15で、光伝達網(OTN)に関する多数の寄書提案を行っている。特にOTN上におけるイーサネット転送、OTNの100Gbit/s化について、イーサネットを最重要視したOTNへの転換を基本とする日本発の技術提案を進め、OTN標準化に大きく貢献した。
4 Suyong EUM/独立行政法人情報通信研究機構/ネットワーク研究本部ネットワークシステム総合研究室
将来網が持つべき重要な性質の一つであるデータ指向に関する国際標準化活動において、世界で初めての国際標準化勧告ITU-T Y.3033 Framework of Data Aware Networking for Future Networksの成立にエディタとして積極的に寄与し大きく貢献した。
5 数井 君彦/株式会社 富士通研究所/メディア処理システム研究所
次世代映像符号化規格H.265 の標準化活動に参画し、多くの技術提案により規格の拡充に貢献した。特に超低遅延機能の規格化を主導し、社会インフラとしての映像応用を可能にする、相互接続性のある実時間双方向通信を初めて実現した。
6 河村 高登/日本放送協会/技術局 計画部
ITU-R において、放送に係る周波数共用の技術検討に貢献した。特に、APG12-5やWRC-12における移動衛星業務や短波海洋レーダーへの周波数分配の議題では、放送事業用の固定回線や連絡無線回線との共用検討において中心的な役割を果たし、既存業務の適切な保護に大きく貢献した。
7 実井 仁/日本放送協会/放送技術研究所 伝送システム研究部
ITU-R WP6A会合において、地上デジタル放送の伝送システム勧告の改訂、移動体向け地上マルチメディア放送のプランニング基準の新勧告化、ABU、ARIBでの海外向け基準策定など多大な貢献をした。
8 高野 祐美子/KDDI株式会社/サービス企画本部 ネットワークサービス企画部 グローバルサービスグループ
新Report ITU-R M.2243 の完成に貢献。特に、モバイルブロード化が進む技術的要因、マーケット要因の分析及びそれらを元にした将来のトラフィック予測の考え方を、自らが主査を務めるARIB標準化部会Future IMT WGで取り纏め、新報告に反映させるとともに、関係国間の意見調整を行い、円滑な勧告化の達成に貢献。また、引き続き新勧告の作成にも従事し、将来の携帯技術が導く新しい社会に対するビジョンを提案するなど、標準化活動に貢献。
9 武智 洋/株式会社ラック/サイバー・グリッド・ジャパン 兼 サイバー・グリッド・ジャパン サイバー・グリッド研究所
10年以上にわたりITU-T SG17におけるセキュリティ分野の国際標準化活動に参画し、2度にわたりアソシエイトラポータを務めたほか、エディタとしてX.1206(セキュリティ関連情報及びアップデートの配信の自動通告を行うためのベンダー中立の枠組み)の完成に主導的な役割を果たした。
10 陳 嵐/株式会社NTTドコモ/研究開発センター 無線アクセス開発部
3GPPにおいて、LTE/LTE-Advancedにおける多くの技術提案を行うとともに議論をリードし、仕様策定に大きく貢献した。また、IEEE 802.11vにおいて、技術提案を行うことで仕様策定に貢献した。さらに、中国の研究フォーラム(FuTURE)におけるワーキンググループの副議長等を務め、日中の政府機関、大学、及び企業間における移動通信技術の交流促進を図ると共に、標準化、及び将来の方向性に関する両国のコンセンサス作りに多大な貢献を行った。
11 辻 宏之/独立行政法人情報通信研究機構/ワイヤレスネットワーク研究所 宇宙通信システム研究室
ITU-R SG5 において永年にわたって参画し、成層圏プラットフォームの議論およびWRC での標準化を中心に活発に活動を行った。関係国との調整を行い、その結果成層圏プラットフォームへの新たな周波数の割り当てに貢献した。また、ITU-R SG4 WP4B におけるITU-R 報告S.2151 の改訂や、ITU-R SG5 WP5A におけるITU-R 新報告M.2282「航空機を利用した公共移動通信システム」の成立に貢献した。
12 畑川 養幸/KDDI株式会社/技術統括本部 KDDI研究所 無線通信方式グループ
ITU-R SG5 WP5DにおけるIMT-2000の不要輻射に関する勧告改訂の際、改訂内容を日本の無線設備規則と整合させることに成功し電波資源の有効利用に寄与すると共に、日本で使用される、又は海外から日本に持ち込まれるIMT-2000端末の国際ローミングを可能にした。
13 樋口 崇則/スカパーJSAT株式会社/技術運用本部 電波業務部周波数調整チーム
2010年より、ITU-R SG4 WP4Aをはじめ、SG4やWRC-12等会合において衛星通信網の調整手続に係る課題に対して、我が国の意見を反映するため寄与文書を作成するとともに、これらの会議に参加しITU勧告等の策定やRR改正に尽力した。2015年には、WRC-15会合において衛星調整手続きの見直しが議論されることから、今後も引き続き衛星通信分野におけるITU活動への貢献が期待される。
14 Anand Raghawa PRASAD/日本電気株式会社/第一キャリアサービス事業部
3GPP TSG-SAにおけるセキュリティ標準化WG(SA3)に10年以上参画。標準課題「IMSにおける不審な通信の遮断」ラポータを担当し、副議長を経て、2013年にSA3議長に就任。SAE/LTEセキュリティを含む主要標準化案件の仕様策定および活動マネジメントに大きく貢献している。インドのICT標準化フォーラムGISFIでもセキュリティおよびGreen ICTのワーキンググループの議長を務め、インド国内の通信標準化活動に貢献している。
15 巳之口 淳/株式会社NTTドコモ/研究開発センター ネットワーク開発部
移動通信システムコアネットワークにおけるサービス要求条件・アーキテクチャの専門家として、ITU-T, 3GPPにおける国際標準化活動、欧州プロジェクトへの参画、オペレータ団体での国際協調を2001年より継続的に実施し、技術/運営の両面で寄与してきた。
16 村上 誉/独立行政法人 情報通信研究機構/ワイヤレスネットワーク研究所 スマートワイヤレス研究室
コグニティブ無線技術に関する研究成果に基づき、ITU-R WP5A やWP1B にて技術レポートやWRC-12 CPM 文書の作成に貢献し、日本の研究成果の収録に努めた。また、IEEE SCC41(現 DySPAN-sc) 1900.4WG 等の関連標準化団体にも寄与し、技術規格の成立に貢献している。
17 山本 武志/日本電気株式会社/システムデバイス事業部
ITU-R SG5 WP5A会合において、高度道路交通システム(ITS)の車車間通信及び路車間通信に関する勧告作成のためのドラフティンググループ議長を務め、交通事故死者数削減に資するシステムの国際標準化に多大に貢献。
国際活動奨励賞 国際協力賞対象分野(3人)
1 齋藤 秀俊/KDDI株式会社/KDDIソリューション事業本部メディア営業部
日本国が進める超高速インターネット衛星「きずな(WINDS)」や次期気象衛星「ひまわり8/9号」通信実験で中心的役割を担うなど島嶼国を含むアジア・太平洋地域の情報格差の解消や防災機能の向上に向けた国際協力活動において顕著な実績を残した。
2 阪口 安司/日本放送協会/技術局 首都圏技術部
ペルーにおける地上デジタル放送(ISDB-T)実用化の支援業務に従事し、現地の運用事情に即した文字スーパー機能を組み合わせた緊急警報放送(EWBS)方式を発案した。また、ISDB-Tインターナショナル技術調和WGの作業班議長を務め、同方式を標準方式とするISDB-T採用国の国際合意に結びつけた。
3 福島 文枝/特定非営利活動法人(認定NPO法人)BHNテレコム支援協議会/事務局
BHNテレコム支援協議会においてチェルノブイリ原発事故被災者支援やインド洋津波被災者支援、アジアの若手電気通信事業従事者研修、さらにはアフガニスタンの医療設備無線網構築に関わる事業に従事し、プロジェクトの円滑な遂行と被災者や研修員への支援を通じて国際協力に寄与した。