令和6(2024)年度 受賞者功績概要

(敬称略・所属は推薦時)

総務大臣賞(1件)  
1

 

西田 幸博 / 日本放送協会  

 

2015年~2023年の8年間に渡りITU-R SG6議長を務め、超高精細度テレビジョン映像方式やHDR-TV(高ダイナミックレンジテレビジョン/High-Dynamic Range Television)方式の勧告策定をはじめ、AIやイマーシブメディア等の新技術を放送に導入する取り組みを主導するなど、放送の将来を見据えた放送技術の国際標準化に多大な貢献をした。2023年10月には、ITU-R SG6が策定した勧告ITU-R BT.2100がHDR-TVの発展に大きく寄与したことを称えて、テレビアカデミー(The Television Academy)より第75回工学・科学・技術エミー賞がSG6に授与されるなど、その活動は高く評価されているところである。RA(無線通信総会/Radiocommunication Assembly)-23では研究委員会の構成と作業計画を所掌する第4委員会議長としてITU-R全体へ貢献した。国内でも、ARIB(電波産業会/The Association of Radio Industries and Businesses)における規格会議委員長、関連委員会の長として、ITU-R標準の国内標準化、ITU-Rへの日本寄書作成など多大な貢献を行った。

 
日本ITU協会賞 特別賞(1件)

1

杉本 真樹  / Holoeyes株式会社・帝京大学冲永総合研究所 Innovation Lab・帝京大学医学部外科学講座 肝胆膵外科

 長年、医療分野(外科)へのICT技術の活用に取り組み、最近ではXR/VR/AR/MR技術を外科手術に応用する具体的な製品開発、提供、普及活動を積極的に進めている。最近は Apple Vision Proによる空間コンピューティングやメタバースなどによる遠隔医療、遠隔ロボット手術、国産手術ロボットの仮想力覚空間提示などの研究と社会実装にも取り組み、ドバイ、サウジアラビア、エジプトなどへのICT技術による医療支援も積極的に行っている。このように、国内外の学会、セミナーなどで普及に努めるだけでなく、全国の医療施設、学術機関にて、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、医療系技師などによる手術前の手順確認(シミュレーション)や手術中の画像支援ナビゲーション)、手術を受ける患者へのインフォームドコンセント(説明と同意)、医療者・医療系学生への教育など、従来のレントゲン写真、CT/MRI 写真(連続断層写真)に続く、3D 空間での医療情報の活用を実現していることは社会的な意義も大きく、医師、起業家として更なる活躍が期待されている。 

 
日本ITU協会賞 功績賞(9件)  
1 井上 正純  / 公益財団法人KDDI財団  
 APT海外技術研修の企画・実施及びミャンマー等でのデジタル・ディバイド解消プロジェクトの遂行、カンボジアやミャンマーでの学校建設や情操教育の提供、ネパールでの視聴覚デジタル教材開発と特別支援学校への導入など、10年にわたり、開発途上国へICT環境整備、教育環境の提供、人材育成等で大きな功績を挙げた。  
2 今田 諭志 / KDDI株式会社  
 2000年よりITU-R WP 5D会合を中心に日本代表団の一員として移動体及び衛星の両通信分野の標準化に貢献。WRC(世界無線通信会議/World Radiocommunication Conference)-23会期までにドラフティング議長等として勧告、報告を完成に導くと共に、多数の周波数共用検討寄書を入力し、携帯電話用周波数追加特定に尽力。今季、ITU-R SG 5副議長に就任し、今後の活躍も期待されている。  
3 岩崎 順子 / 日本電気株式会社  
 ネットワークのクラウド化・AI活用の国際標準化に10年以上にわたり貢献。特にITU-T SG11/Q14(課題14:クラウド相互接続)のエディタと、TMForum(ネットワークオペレーション業界標準化団体/TeleManagement Forum)等でのAI運用自動化動向をTTC(一般社団法人情報通信技術委員会/The Telecommunication Technology Committee)や学会で国内展開し貢献した。現在もTTC AI活用専門委員会副委員長や量子鍵配送ネットワーク標準化で寄与している。  
  岩間 司 / 国立研究開発法人情報通信研究機構  
 20年以上にわたり標準時・標準周波数のITU活動に従事。特に社会システムに大きなリスクとなり得る「うるう秒」について2000年の議論開始当初から積極的に参画し、我が国の意見を反映させるべく、APT各国の意見を取りまとめると共に、欧米諸国と協調してWRC(世界無線通信会議/World Radiocommunication Conference)-23におけるうるう秒の実質的廃止の決議に貢献した。  
5 軍司 明允 / 特定非営利活動法人BHNテレコム支援協議会  
 移動体通信システムの専門家として、インドネシアの公共安全通信やフィリピン気象観測通信の高度化、韓国企業との協業等、アジア各国で無線システムの共同開発を牽引。セミナー開催等を通じて日本の高度な通信技術を移転し、開発途上国における公共通信サービスシステムの高度化並びにネットワーク化を推進し、情報通信分野での国際協力に寄与した。  
6 近藤 芳展 / NTTアドバンステクノロジ株式会社  
 ITU-T SG15の活動ではアクセス及びホームネットワークに関する標準化に貢献。特に、ホームネットワーク向け伝送方式への日本の技術仕様盛込みを積極的に推進。ITU-T SG5の活動ではアソシエート・ラポータとして高電圧直流給電に関する多数の標準化を主導したほか、気候変動とデジタル技術がもたらす持続性影響の評価手法の標準化に貢献した。  
7 中村 浩崇 / NTTイノベーティブデバイス株式会社  
 ITU-T SG15において、モバイルフロントホールやビジネス向け高速アクセスサービスへの適用が期待される100ギガビット級のポイント・ツー・ポイント型光アクセスシステムの標準化に大きく貢献。特に、仕様制定に向けて設置されたアドホックグループのリーダーを務めて、参加メンバーの意見を取りまとめ、合意に努めた。  
8 山田 渉 / 日本電信電話株式会社  
 ITU-R SG3会合への継続参加、寄与文書の入力を通じ、高速無線システムのための回線設計用伝搬モデルや干渉評価用伝搬モデルに関する勧告改訂に大きく貢献した。さらにSG3配下のWP3Kの副議長をはじめとし、WG3K-3議長やDG3K-3b議長などの要職を務めるなど、会合運営・議論の活性化・内容の充実化に大きく貢献した。  
9 HAPS国際周波数標準化チーム  / ソフトバンク株式会社  
 HIBS(IMT基地局としてのHAPS(高高度プラットフォーム))/(High Altitude Platform Stations as IMT Base Stations)は、災害復旧やデジタル・ディバイドの解決の切り札として期待されている中、WRC-23(2023年世界無線通信会議/2023 World Radiocommunication Conference)ではこのHIBSに利用可能な周波数帯の更なる確保のための議論を主導し、我が国から提案した700~900MHz帯、1.7GHz帯及び2.5GHz帯の追加決定に大きく貢献した。  
日本ITU協会賞 奨励賞(15件)  
1 縣 幹哉 / KDDI株式会社  
 WRC(世界無線通信会議/World Radiocommunication Conference)-23議題1.17(衛星間業務追加分配に対する制度対応)の担当として関連会合に参加、地上業務保護に必要な基準の策定に関するドラフティング議長等を務め、決議作成・RR(無線通信規則/Radio Regulations)改正に貢献。またWP5D対応においては、IMT-2030フレームワーク勧告策定に向け関係各国との連携を推進、研究会期内での承認に寄与した。  
2 宇都宮 隆介 / 楽天モバイル株式会社  
 ITU-R、APT等の会合に日本代表団の一員として継続的に参画し、主に携帯電話に関する国際標準化活動に貢献。WRC(世界無線通信会議/World Radiocommunication Conference)-23においては、携帯電話と衛星の直接通信(衛星ダイレクト通信)のための周波数の新規分配に向け、各国と交渉を行って議論を進め、決議案の作成に主要な役割を果たした。今後も積極的な活動が期待される。  
3 海野 恭平 / 株式会社KDDI総合研究所  
 ITU-TとMPEG(Moving Picture Experts Group)の共同プロジェクトである映像符号化技術の国際標準化に参画し、H.266及びH.266.1の勧告化に貢献。さらに、MPEGにて点群符号化規格G-PCC (Geometry-based Point Cloud Compression)1st Edition及びV-PCC(Video-based Point Cloud Compression)参照ソフトウェアの規格化に貢献。現在、MPEG規格エディタとしてG-PCC 2nd Edition標準化を牽引している。  
4 河﨑 純一 / 株式会社KDDI総合研究所  
 運用自動化に関する標準化及び標準の普及に貢献。ETSIにおいて、エンド・ツー・エンド自動化のための提案をグローバルパートナーと連携して規格化を実施。また、ITU-TにおいてAI/MLを使った運用自動化アーキテクチャの勧告化、更には「ITU AI/ML in 5G challenge」イベントでの出題(課題設定)を通してAI/ML活用の促進に大きく貢献した。  
5 菅澤 孝一 / NTTイーアジア株式会社  
 ベトナム国において、光ファイバ通信網整備・関連技術の普及、教育を中心とするICT利活用、産官学連携によるスマートシティー実現に向けたDX(デジタル・トランスフォーメーション/Digital Transformation)等に関する調査・研究・人材育成等、多様な面から国際協力活動に大いに貢献している。  
6 鈴木 泰樹 / KDDI株式会社  
 ITUで定義されたIMT-2020(5G)実現のため、3GPP RANにて ワークアイテム「Non-collocated intra-band EN-DC/NR-CA」のラポータとして、またO-RAN 「Open Fronthaulの相互接続試験仕様」提案等、世界で使用可能なモバイル技術仕様策定に貢献している。  
7 陶山 桃子 / 日本放送協会  
 WRC(世界無線通信会議/World Radiocommunication Conference)‐23における日本の衛星放送に関連する4件の議題(議題1.17、議題7トピックF、議題7トピックH、議題10)に対して、寄与文書を提出して議論に参画し、日本提案がおおかた採択されるなど、日本の衛星放送の発展とITUの標準化活動に貢献した。  
8 武田 大樹 / 株式会社NTTドコモ  
 LTE-Advanced及び5G技術の実証実験を通して、IMT-Advanced(4G)及びIMT-2020(5G) ITU-R勧告の有効性を検証し、早期実用化に貢献した。また、IMT-2020 ITU-R勧告に向けた5G NR(New Radio)仕様の3GPPにおける標準化活動において技術検討を進め、5G NRのLayer-1仕様策定に貢献している。  
9 チン ウェンヂン / 株式会社NTTドコモ  
 ITU-Tで策定した自律ネットワークのアーキテクチャ・フレームワークを実現するため、ネットワーク運用自動化の標準化を検討するETSI ZSMにおいて、ネットワークスライスを含むEnd-to-Endサービスマネジメントの標準化及び、デジタルツイン、インテント、クローズドループ関連自動化技術の仕様策定に貢献した。  
10 難波 忍 / KDDI株式会社  
 無線基地局のオープン化を推進するO-RANアライアンスにおいて、RANコントローラ(RIC)を利用して無線ネットワークの通信品質を保証する新しい仕組みの導入に貢献。2021年からRICによって制御されるインタフェースを規定するワーキンググループの共同議長を務め、マルチベンダの基地局を統一的に制御する標準仕様の策定に貢献した。無線基地局のオープン化を推進するO-RANアライアンスにおいて、RANコントローラ(RIC)を利用して無線ネットワークの通信品質を保証する新しい仕組みの導入に貢献。2021年からRICによって制御されるインタフェースを規定するワーキンググループの共同議長を務め、マルチベンダの基地局を統一的に制御する標準仕様の策定に貢献した。  
11 藤井 勝巳 / 国立研究開発法人情報通信研究機構  
 CISPR(国際無線障害特別委員会/Comite international Special des
Perturbations Radioelectriques)において、ITUでも検討されている無線電力伝送システム等から発生する9kHz〜30 MHzの無線通信妨害波を測定する方法の国際標準化に積極的に貢献、自ら研究開発し提案したアンテナ校正法、測定用サイト評価法がISPR国際規格に採用される等、顕著な功績を挙げた。
 
12 伏木 雅/ 富士通株式会社  
 2018年より3GPP RANワーキンググループ4 へ参加し、日本の法律・省令に準拠した標準仕様の開発とその商用展開に貢献。特に、Release 17 でのミリ波帯固定無線端末の無線性能を規定する検討アイテムのラポータを務め、日本からのアップストリーム活動を生かす形でタイムリーな標準仕様策定を実現させた。  
13 松川 隆介 / 株式会社NTTドコモ  
 ITUで定義されたIMT-Advanced (4G)・IMT-2020 (5G)を実現するため、3GPPにおいて端末・NW装置間の制御信号に関する仕様策定に貢献。またO-RAN AllianceにおいてWGの共同議長として3GPP規定に準じたIF(インターフェース/interface)オープン化のプロファイルの規定を策定し、装置間のマルチベンダ相互接続の実現に貢献した。  
14 山﨑 大人 / 国際協力機構(JICA)  
 2013年より、JICA海外協力隊としてパラオ共和国の最高裁判所でセキュリティ保守やIT技術指導を行ったところから始まり、ベトナム・カンボジア・フィリピン等に対するJICAの数々のプロジェクトへ貢献。各種国内組織、外国政府、ADB・ITU・世界銀行等の国際機関との連携を推進して対外的にJICAの活動報告を行い、日本の民間企業や国際機関等との連携促進に尽力している。  
15 渡邊 淳司 / 日本電信電話株式会社  
 2011年から触覚伝送技術の研究に従事しており、2021年より、ITU-T SG16において、その標準化活動に継続的に参加。これまで映像と音声に限られていた空間伝送技術の標準において、振動触覚情報の伝送に関するユースケースやサービスシナリオの追加、伝送プロトコルの勧告完成に寄与した。  

 

以上